vi 従来,外科的気道確保の方法として,もっぱら外科的気管切開術が用いられてきた。しかし近年になり,より迅速・簡便な方法として,輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術,経皮的気管切開術なども広く行われるようになってきたが,それらの手技は耳鼻咽喉科以外の診療科が行うことが多く,それに伴い新たな合併症なども生じるようになってきた。その原因の一つは,喉頭に関する解剖・生理などの知識が乏しいことにあるのではないかと思われる。 逆に,喉頭の専門家である耳鼻咽喉科医は外科的気管切開術以外の経皮的気道確保術についての知識が乏しく,合併症に対する対応も困難な場合が多いのが現状である。 これらの問題を解決するためには,経皮的気道確保を担当する各診療科が本治療法について共通認識を持つことが重要である。そこで,診療領域に上気道が含まれる耳鼻咽喉科,食道外科,呼吸器内科,呼吸器外科など複数の診療科が横断的に参加している日本気管食道科学会が,甲能直幸理事長の指示のもと各科のエキスパートを集めて,これら経皮的気道確保のガイドライン作りを行うこととなった。しかし,これらの手技は新しく,まだ確固としたエビデンスがないため,現状におけるマニュアルとしてまとめるにとどめることとした。このマニュアルを通じて,さまざまな経皮的気道確保術に関する基本的な喉頭解剖,術式の適応,手術手技,合併症の予防法などについての幅広い知識を持っていただければと願っている。2009年10月日本気管食道科学会診療ガイドライン委員会委員長 岸 本 誠 司はじめに
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