6 Chapter Ⅰ.外科的気道確保とは ● ● ● ❸保持用カニューレ(商品名レティナ ®など,図Ⅰ-7):パイプ部を内外のフランジで皮膚と気管前壁で挟み込むように固定する形状のカニューレ。呼吸が自立しており,誤嚥がないかごく軽度で,痰の吸引や気管内の観察など気管孔を保持しておきたい場合,あるいは,気管切開孔閉鎖に向けての呼吸訓練や排痰訓練を行う場合に適応となる。パイプ部分の長さが短すぎると抜けやすい,潰瘍形成などのトラブルが生じ,長すぎると肉芽形成や呼吸困難の原因となるため,適正なサイズを選定する必要がある。内部フランジパイプニューレでは形状がフィットしない場合に良い適応となるが,保険償還価より高額であるというデメリットがある。 二重管側孔なし:分泌物が多い場合に内筒を洗浄したり,交換することができる。一方で,内筒を有することで,外径に比し内径が細く分泌物により閉塞しやすいことに留意する。 二重管側孔あり:内筒を抜去し発声用バルブを装着することにより側孔から上気道に呼気を導出し,発声ができる。気管切開からの離脱を目指しながらも,誤嚥のリスクがある症例や,夜間などに人工呼吸を要する場合に使用する。❷カフなしカニューレ:誤嚥がほとんどなく,呼吸が自立していることが使用の必須条件である。シンプルな構造であるため,管理が容易で事故抜去が生じた場合も合併症のリスクを抑えることができる。定期的な気管内吸引を要する場合や,上気道狭窄に対する気道確保,気管切開からの離脱の前段階として気管切開孔の保持を目的として使用する。 ● 一重管:側孔と発声バルブを有するタイプは気管切開からの離脱に向け,発声や呼吸訓練,嚥下訓練に有用である。 二重管: 分泌物が多く,内筒の洗浄や交換を要する場合に使用する。❹小児用カニューレ:気管が細いため,内腔をより広く確保するために人工呼吸管理を行う場合も,カフなしを使用することが多い。気管が短く,細い,また側弯などの解剖学的異常を有することが多いため,肉芽による閉塞や出血のリスクが高いことから,ファイバースコープによる観察やCTにより周囲組織との位置関係を把握し,適切なカニューレの選択を行うことで合併症を回避する。 図Ⅰ-7 保持用カニューレ(レティナ ®など)の構造
元のページ ../index.html#20