外科的気道確保マニュアル 第2版
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1 はじめに 輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術(以下,CT穿刺・切開術)は,緊急時の気道確保の手段として,1921年Jacksonが初めて報告した 1)。しかし声門下狭窄などの合併症が問題視され普及しなかった。1976年のBrantiganとGrowによる大規模調査の結果,待機的なCT穿刺・切開術の安全性が報告された 2)ことを受け,再び注目されるようになった。 CT穿刺・切開術は,気管切開術と比較して,出血量が少なく,また患者を頭部後屈位とすることなく迅速・簡便に実施できることから,緊急時の特に外傷初療時の気道確保に適した手技とされる。 本項では,CT穿刺術および切開術について,適応・禁忌・手順手技・合併症について解説する。なお,合併症については項目を挙げるのみとし,本章C項で詳述する。2 適 応■ 緊急気道確保目的 確実な気道確保の適応であるにもかかわらず,気管挿管が不可能 *で,バッグバルブマスク換気や声門上器具により酸素化が維持できない場合。* 「気管挿管が不可能」の目安は,熟練した医師が2回試みても挿管できない場合 3)。■ 喀痰自己排出困難症例における比較的短期間の吸痰ルート確保目的 肺炎,COPD急性増悪,胸部/腹部手術後などの症例で,人工呼吸管理までは不要(もしくは人工呼吸離脱後)であるものの,喀痰の自己排出が不十分で,積極的に吸痰を実施することが望ましいと考えられる症例が対象となる。市販のキットを用いて,気管切開よりも低侵襲に,比較的短期間(数日から1週間程度まで)実施される。特に高齢者が良い適応となる。ChapterⅢ輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術ⅢA. 輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術の手技の実際

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