外科的気道確保マニュアル 第2版
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3 輪状甲状靱帯(膜)穿刺術 本項では14G程度の太さの血管留置針を用いる場合のCT穿刺術について解説する 4)。なお,市販のキットを用いてカニューレを挿入する場合は,穿刺と切開の中間に位置するハイブリッドとする記述も見受けられるが 5),キットを使って気管前壁を一気に拡張する経皮的気管切開術という用語が一般的となった現在,本マニュアルでは,キットを用いたCT穿刺・切開術を,経皮的CT穿刺・切開術として記す 6)。救急外来で使用可能な血管留置針の中で最も太い14〜16Gの(複数本の針を刺入することもある)を用いるが,上気道完全閉塞の場合,十分な換気を得ることはできないため,強制的に陽圧をかけて酸素を送気する必要がある。なお,緊急避難的に低酸素による心停止を回避する処置であることから,引き続き外科的気管切開術などに移行して,十分な内径(6.0mm程度以上)のカフ付き気管チューブを挿入する必要がある。■ 禁 忌 救命のための緊急処置であり,基本的に禁忌はない。■ 欠 点●十分な換気を得ることが困難。●上気道出血時,気道内への血液・分泌物などの流入(たれ込み)の防止が困難。■ 手 技❶ ❷14Gの血管留置針を用意して5〜10m■の注射器につける。❸ ❹ ❺14Gの血管留置針を輪状甲状靱帯(膜)の直上の皮膚正中に刺す。皮膚をメスで切開しておい22  Chapter Ⅲ.輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術 患者を仰臥位にして右利きの術者は患者の左側に立つ。 頸部を外科的に消毒滅菌して清潔操作で行う。 甲状軟骨と輪状軟骨の間の前方で靱帯を触知し,左手の手指で甲状軟骨を固定する。てもよい。 針を頭側に45度傾けた注射器に陰圧をかけながら注意深く皮下から輪状甲状靱帯(膜)へ針の先端を進める。上甲状腺動脈の分枝である輪状甲状枝(動脈)が輪状甲状靱帯の上方を走行している 7)ことから,輪状軟骨直上を穿刺するとよい。 空気が引ける時点で留置針の先端が気管内に入ったことを確認する。 内筒を抜去し,外筒を尾側に進める。内筒を進めることで気管後壁を貫通しないように注意する。 気道としては不十分であることがほとんどであり,可及的早期に他の確実な気道確保(気管切開等)へ移行する。❻ ❼ ❽ ❾

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