外科的気道確保マニュアル 第2版
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1 はじめに 外科的気管切開術は呼吸障害を伴う上気道狭窄・閉塞への対処法として,古くから行われてきたが,医療技術の発達した現代においては下気道管理を目的として行われることも多くなっている。若手の医師が習得すべき基本的な手術手技と認識されているが,不適切な方法や術後管理によっては合併症が生じることもあり,確かな知識と技術の下に安全に実施することが肝要である。本章では気管切開術および近年行われることが増えた輪状軟骨切開術について解説する。適応決定や細かい手術手技については,術者の経験や患者の状態・状況に応じて適宜変更していただきたい。2 適 応■ 上気道狭窄・閉塞 上気道狭窄・閉塞を呈する喉頭,頸部気管,口腔,咽頭の腫瘍,炎症,浮腫,外傷,瘢痕狭窄,神経障害,先天異常などが適応となる。■ 上気道手術時の気道確保 上気道狭窄・閉塞により気管挿管が困難な患者に対し全身麻酔下での手術を実施する場合,術後に気道の腫脹や出血,分泌物により呼吸障害が生じる可能性がある場合に気管切開が検討される。予防的な気管切開については,呼吸障害が生じる可能性や緊急気道確保の難易度,医療体制などから判断する。■■■■■■■Ⅳ 外科的気管切開術❶ 喉頭疾患:喉頭腫瘍,喉頭嚢胞,急性喉頭蓋炎,喉頭浮腫(深頸部膿瘍,アレルギーなど),喉頭外傷・熱傷,両側反回神経麻痺,声門後部癒着症,先天性・後天性声門下狭窄症,喉頭軟弱(軟化)症など❷ 頸部気管疾患:気管腫瘍(周辺臓器からの圧迫・浸潤も含む),気管狭窄症,気管軟化症,気管外傷など❸ 口腔・咽頭疾患:咽頭腫瘍,咽後膿瘍,小顎症などⅣ

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