外科的気道確保マニュアル 第2版
55/102

Ⅳab外科的気管切開術  41 患者の姿勢は仰臥位とし,気管を上方に引き上げ手術操作を容易とするため,肩枕を置き,頭部を後屈させ頸部を伸展する(図Ⅳ-2)。頸部を伸展すると呼吸困難が増悪する場合は,開始時に頭部の下にも枕を置き,気管開窓直前に枕を外して頸部を伸展する。仰臥位になることすら難しい場合は半座位や座位での実施も考慮する。 喉頭や鎖骨などの解剖学指標と切開線を皮膚ペンで描いてから,局所麻酔下で行う場合は切開部に1%リドカインなどを注射する。 皮膚切開法は横切開と縦切開がある(図Ⅳ-3)。皮膚割線に沿った横切開のほうが気管孔閉鎖後の創部が整容的に優位であるが,緊急性がある場合は,より迅速に気管に到達可能で,輪状甲状靱帯切開への切り替えも容易な縦切開とする。横切開では輪状軟骨下縁の約1〜2 cm下方で水平に3〜4 cm,縦切開では輪状軟骨下縁付近から下方に正中を3〜4 cm切開し,皮下組織を上下または左右に分けながら進む。前頸静脈が術野にかかる場合は結紮切断するか左右 図Ⅳ-2 気管切開時の理想的な体位 図Ⅳ-3 皮膚切開a:横切開b:縦切開

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る