外科的気道確保マニュアル 第2版
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■ 術中合併症4 輪状軟骨切開(開窓)術 輪状軟骨切開(開窓)術は,2007年に鹿野により提唱された輪状軟骨の前壁を切除して外瘻(切開孔)を造設する外科的気道確保法である3)。皮膚から輪状軟骨までの到達距離が短く,経路上に甲状腺のような出血しやすい臓器も通常存在しないため,比較的安全かつ迅速な気道へのアプローチが可能である。輪状軟骨という後壁のある硬い枠組みを用いた切開孔を造設でき44  Chapter Ⅳ.外科的気管切開術も多いので,緊急気道確保時でなければ,安全かつ容易な気管カニューレの交換を念頭においた気管切開術を実施すべきである。❶ 局所麻酔薬のアレルギー・ショック❷ 窒息❸ 出血(特に前頸静脈,甲状腺,気管断端)❹ 気胸(肺尖部の損傷)❺ 反回神経麻痺❻ 気管食道瘻(後壁の損傷)❼ 気道熱傷(電気メスなどを使用する場合) 通常,適切に手術を行えば,ほとんど術中合併症は生じないが,緊急度の高い気管切開中に呼吸困難から患者の体動が激しくなったときなどに不適切な部位の切開や不十分な止血が生じうる。また,気道熱傷は,高熱となった電気メスと高濃度の酸素により,塩化ビニール製の気管チューブが燃焼して生じた事例が複数報告され,2010年に医薬品医療機器総合機構(PMDA)より医療安全情報No.14として警告されている2)。 図Ⅳ-8 気管カニューレの留置 図Ⅳ-9 全周性の縫合(気管開窓術)

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