■ 適応(推奨すべき状況) ❶ 喉頭低位により,頸部伸展によっても気管を触知できない場合 ❷ 頸部の拘縮や頸椎疾患などにより,頸部伸展が困難または禁忌であり,気管を触知でき■ 禁忌(考慮すべき点) 絶対的な禁忌はないが,保持用カニューレのフランジが声帯に接触しやすい,輪状甲状筋の剥離や瘢痕化から高音の発声が困難となる可能性がある,などの問題がある。回復する見込みがある患者に実施する場合は,他の方法がないか十分に検討する。■ 基本的術式 皮膚切開は縦切開でも横切開でもよいが,縦切開のほうが切開範囲の変更に対応しやすく,粘膜弁と縫合しやすい。胸骨舌骨筋を左右に分けると,輪状軟骨に付着した輪状甲状筋が現れる。輪状甲状筋を輪状軟骨の切除範囲で剥離し,軟骨前面を露出させる(図Ⅳ-10)。甲状腺錐体葉が上方に伸びている場合は適宜切除する。外科的気管切開術 45 ❸ 高度肥満や短頸により気管の位置が深くなり,安全かつ迅速な手術の実施が困難であ ❹ 腕頭動脈の走行異常や甲状腺腫瘍などにより,通常の気管切開では危険性が高い場合 ❺ 将来,輪状軟骨部に永久気管孔(切開孔)を造設した誤嚥防止術を実施する可能性がある場合るので気管カニューレを自己(事故)抜去しても狭窄しにくく,再挿入が容易である 3)。逆に切開孔が不要となり閉鎖する際は,hinge flapなどによる閉鎖手術が必要となる。通常の外科的気管切開術に代わるものとして実施可能であるが,前述の「適応」に加えて,本術式の適応(特に推奨すべき状況)と禁忌(特に考慮すべき点)を追加した。ない場合り,術後の気管カニューレ管理でのトラブルが予測される場合 図Ⅳ-10 輪状軟骨切開術における輪状軟骨前壁の露出Ⅳ
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