外科的気道確保マニュアル 第2版
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■ 術中合併症 ❶ 局所麻酔薬のアレルギー・ショック ❷ 出血   輪状甲状間は上甲状腺動脈輪状甲状枝があり,多量の出血が生じる可能性があるので,46  Chapter Ⅳ.外科的気管切開術 輪状軟骨を切除する範囲は,弓部のうち前壁の部分(約1/3周)は切除可能であるが,側壁を切除しすぎると切開孔が浅くなり気管カニューレを留置しにくくなる。将来切開孔を閉鎖する可能性が高い,またはスピーチカニューレを使用する場合は気管カニューレを留置できる程度の切除とすべきである。輪状軟骨はリウエル型丸ノミ鉗子で鉗除すると軟骨のみを除去可能であり便利であるが,輪状軟骨の内側面の軟骨膜を剥離子で剥離し剪刀で切除してもよい。切開孔を大きく造設したいときは,第一気管輪を逆U字型に切開,または一部切除する 4)。 喉頭粘膜(+輪状甲状靱帯,軟骨膜)は横H型に切開し,左右の粘膜弁を皮膚と縫合し,軟骨断端を覆うようにする(図Ⅳ-11)。皮下組織の厚みなどに応じて,適宜切開法を変更してもよい。可能なら上下でも皮膚と粘膜断端または軟骨を縫合し,全周性に形成処置を行う。 最後に,通常の気管切開と同様にカフ付きの気管カニューレを留置するが,解剖学的な違いから,輪状軟骨後壁にチューブが接触したり,先端が気管前壁に接触したりすることがあるので,適宜適合する気管カニューレに変更する。止血の準備をして慎重に粘膜を切開する。 ❸ 気道熱傷(電気メスなどを用いた場合)(二藤隆春) 図Ⅳ-11 輪状軟骨切開術における喉頭粘膜の切開

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