■ 病態に応じた気管切開(開窓)方法 気管切開方法として,多くは縦切開が行われているものの,横切開や十字切開,逆U字切開などの開窓術が行われることもある。気管壁を切除する開窓方法は気管軟化症をきたしやすくカニューレ抜去困難になりやすい,縦切開のみで皮膚によって被覆されていないと肉芽が形成しやすい,といわれているが,実際にはどのような切開方法であったとしてもあまり有意差はないとの報告もある 6)。年少児に対する気管切開で前壁を大きく切除すると気管孔を閉鎖する際に再建術が必要となることもある。また,長期的に高い換気圧で人工呼吸器管理が必要である場合,気管孔がカニューレのサイズよりも大きいとエアリークが増加しPEEPがかかりにくくなるため管理に難渋する 7)。一方,気管切開孔辺縁に皮膚を縫合することは,万が一の事故抜管やその後の再挿入において安全性が高い。施設の術後管理体制や患者の病態に応じて開窓方法を検討することは重要である。48 Chapter Ⅳ.外科的気管切開術❹気管カニューレの選択 長期人工呼吸器管理が必要である場合は,カフ付きのカニューレが必要となり,気道確保目的の場合はカフなしのカニューレを挿入する。カニューレの長さが短いと事故抜去しやすく,長いと先端が気管分岐部に当たってしまうため,カニューレ挿入後は両肺の換気音などを確認する。❺皮膚縫合 気管カニューレ周囲までタイトに縫合すると皮下気腫を生じることがあるため,ややゆとりをもたせる。❻術後処置 気管カニューレのフランジをテープで固定する。指が一本入る程度にしめる。牽引糸は突っ張って切れてしまうことのないように糸にゆるみをもたせて前胸部にテープで固定する。手術室退室前に胸部単純X線撮影をし,カニューレの位置を確認する。❼術後管理 術後の気管カニューレ交換は7日目頃に行い,抜糸する。海外では5〜7日で初回カニューレ交換を行っているとの報告もあり,全身状態を考慮して増減するとよい 5)。初回のカニューレ交換前に造影CTを撮影し,カニューレ先端の位置や腕頭動脈との関係を確認した上でカニューレを選択すると,のちの腕頭動脈瘻のリスクを抑えることができる。a)気管切開術❶縦切開(+牽引糸)(図Ⅳ-12a,b)または縦切開+気管壁と皮膚の縫合(図Ⅳ-12c) 7) 皮膚と縫合する時間がかからないため手術時間が短い。また未熟児など気管がかなり細い場合に大きく気管壁が欠損することもないため,成長後気管カニューレ抜去の際に欠損部の陥凹や狭窄をきたすことが少ない。糸で牽引するだけでなく,縦切開部位の下方を皮膚と縫合することで皮下にカニューレを誤挿入する可能性を減らすことができる図Ⅳ-12cの方法は安全性も高い。また,皮膚を縫合してもカニューレ抜去後の気管皮膚瘻の大きさや頻度は大差ないと
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