外科的気道確保マニュアル 第2版
65/102

1 はじめに 経皮的気管切開術(percutaneous dilatational tracheostomy, PDT)は,1955年にSheldenらが提唱した概念である1)。その後,1985年にCiagliaらが,皮膚切開・気管穿刺・ガイドワイヤー挿置後に,ダイレーターにより段階的に気管切開孔を広げる方法(Ciaglia法)を提示した2)。1990年にGriggsらが気管切開孔を鉗子で広げていく方法(Griggs guidewire dilating forceps technique;GWDF法)を提唱し,さらに1999年にはCiaglia法を改良し,2本のダイレーターでカニューレ挿入可能な大きさまで気管孔を拡張する方法であるBlue Rhino法が,より短時間で施術可能で実用的な方法として紹介された(クックジャパン)3)。近年,ICUを中心として,角(つの)型のダイレーターで気管穿刺部を一気にワンステップで拡張する方法が主流で,Ciaglia Blue Rhino法(CBR法)3),あるいはsingle-step dilation tracheostomy(SSDT)4)と称される。2 適応と禁忌 適応は,一般的な気管切開術に準じ5),①長期間の人工呼吸管理,②人工呼吸器離脱困難,③分泌物過多,④気道防御不能,が挙げられる。さらに,種々のPDTキットにおいて警告あるいは禁忌の欄に添付文書で記載があるように,⑤甲状軟骨・輪状軟骨・気管といった解剖学的ランドマークが触知可能で,⑥気管挿管されている症例が適応となる(表Ⅴ-1)。PDTは経喉頭的にすでに気管挿管されている成人に対して待機的に行われる術式であるため,外科的気管切開術(surgical tracheostomy, ST)の適応のうち,経喉頭的な気管挿管ができないような“上気道閉塞”は適応とならない点に注意が必要である。 禁忌(原則禁忌を含む)は,①緊急時,②頸部のランドマークが触知困難,③小児,④頸部の感染,⑤前頸部の腫瘍,⑥甲状腺肥大,⑦血液凝固機能異常,⑧挿管困難症例,⑨非挿管症例,⑩高いPEEP(≧1.9kPa(20cmH2O)),⑪頸部伸展不良,⑫頸部・気管の手術歴,⑬頸部・気管の形態異常,といった症例である(表Ⅴ-2)。経皮的な気道確保ではあるが,輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術と異なり,緊急気道確保は禁忌である点に注意が必要である。■■■■■■■Ⅴ 経皮的気管切開術Ⅴ

元のページ  ../index.html#65

このブックを見る