3 手 技 GWDF法ならびにCBR法(SSDT)の手順を以下に記す6)。なお,穿刺部位としては,第1-第2気管軟骨間または第2-第3気管軟骨間であり,肩下に枕を入れるなどして,患者の頸部を伸展させ,穿刺予定部位に1〜2cm程度のマークをつけてから施術する。ランドマークとして,甲状軟骨切痕・甲状軟骨下縁・輪状軟骨上下縁ならびに胸骨切痕にマーキングしておくのもよい。いずれの手法においても,盲目的に穿刺することにより気管狭窄7), 8)や気管軟骨損傷7)といった合併症が起こり得ることが指摘されており,適応を慎重に選択し,内視鏡のモニタリング下で正確な操作を行うこと9)〜13)が重要であるが,この点は各種キットの添付文書にも明記されている。また,万一STへの移行が必要となった場合に備え,施術時にはSTの必要物品を手元に用意しておく14)。 以下に示す2つの方法は,いずれもSeldinger法による。すなわち,試験穿刺,ガイドワイヤー留置の後,皮下から気管前壁の予備拡張に続けて本拡張をガイドワイヤー経由で行い,最終的にはオブチュレーターを装着した気管切開カニューレを挿置する。以下にそれぞれの手順を示す。 なお,いずれの術式においても,穿刺部の1次拡張(予備拡張)までは共通している。すなわち,まず患者の肩下に枕を入れて頸部を伸展させた体位とする。そのうえで,軟性内視鏡を気管挿管チューブ経由でチューブ先端と気管内が視認できる位置まで進め,挿管チューブ先端・カフを声門直下に引き上げて固定する。皮膚の消毒・局所麻酔後,穿刺予定部位を皮膚切開し,静脈留置針を気管軟骨間に適切な高さで正中に穿刺したのち内筒を抜去し,外筒を通してガイドワイヤーを留置する。外筒を抜去してガイドワイヤー経由で1次ダイレーターを進め,皮下組織と気管壁穿刺孔を拡張する(図Ⅴ-1)。以後の操作手順を次に記す。52 Chapter Ⅴ.経皮的気管切開術 表Ⅴ-1 経皮的気管切開の適応●長期間の人工呼吸器管理●人工呼吸器離脱困難●分泌物過多●気道防御不能 表Ⅴ-2 経皮的気管切開の禁忌●緊急気道確保●輪状軟骨触知困難●小児●頸部の感染●前頸部の腫瘍●甲状腺肥大●血液凝固機能異常●挿管困難症例●非挿管症例●PEEP≧1.9kPa(20cmH2O)●頸部伸展不良●頸部・気管の手術歴●頸部・気管の形態異常※ただし,解剖学的ランドマークが触知できること,気管挿管されていることが条件。
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