iii 日本気管食道科学会診療ガイドライン委員会による外科的気道確保マニュアルの初版が発行されたのは2009年です。当時,外科的気管切開術に加えて輪状甲状靱帯(膜)穿刺・切開術,経皮的気管切開術が普及しはじめ,それらを含めた手技の基本,周術期管理や合併症対応が整理されました。基本的な手技や解剖も含めて現在でも十分に通用するものでございます。しかし,10年余りを経て手技のみでなく気管切開チューブを含めて製品の変化や改良もみられました。また,2018年には医療事故の再発防止に向けた提言として“気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析”が発行されたこともあり,より確実な手技,安全な周術期管理が求められています。そこで塩谷彰浩前理事長のご指示のもと2021年からマニュアルの改訂を行うこととなりました。本改訂の目的を委員会では“より確実で安全な外科的気道確保の普及”におき,気管カニューレ選択,小児の気管切開,術後管理と合併症予防,看護の立場からの周術期管理を掘り下げることとし,さらにカニューレ関連事故からの教訓,2020年度の日本気管食道科学会公認の疫学調査研究の結果についても追加しました。 また,今改訂における大きな変化は書籍販売でなく,e-Bookとして発行することです。近年は学生も若手医師らも書籍やハンドブックを手に学習や診療に臨むことが減り,タブレット等で参照することが当たり前になってきています。これによって,関連する多くの科の医師・メディカルスタッフらにも本マニュアルが知られ,活用されることを期待しています。一方,病棟や外来の現場で直ぐに“手に取れる”利点も捨てがたいことから,e-Bookを印刷して紙媒体として使用することも可能といたしました。 本マニュアルはエビデンスに裏付けられたガイドラインの作成には至っていないことは今後の課題です。しかし,おかげさまで各領域のエキスパートが,豊富な経験に加えて,多くの裏付けとなる文献の再確認を経て,充実した内容となりました。ガイドライン・マニュアル委員会,執筆者の先生がたには多くのことをご指導いただきました。深甚なる感謝を申し上げます。2023年1月日本気管食道科学会 ガイドライン・マニュアル委員会委員長 藤 本 保 志巻 頭 言
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