2 術後管理■ カニューレの固定 安全で安定した換気のためには気管カニューレを気管孔に固定することは必須である。気管カニューレの逸脱・迷入は換気が不能となり,窒息に直結する危機的な状況に陥るというリスクを持っている。気管切開術後早期は気管切開孔の器質化が不十分で気管カニューレが抜けると再挿入が困難となる。 気管カニューレの逸脱・迷入は気管切開当日から12日の間に多いとされており,この期間はカニューレの固定には特に注意する必要がある。皮下や縦隔内に迷入し気づかずに陽圧換気をすると,皮下気腫,縦隔気腫や緊張性気胸を起こし,呼吸状態はさらに悪化してしまう。 カニューレの固定には施設ごとのルールがあると思われ,付属のバンドやサナダ紐などが使用されている。筆者の病院では固定の緩み防止のため,原則としてサナダ紐を使用するよう院内のガイドラインに定めている。固定紐はほどけないように固結びをして皮膚と紐の間に指1本が入る程度で固定する。その他,糸針固定でカニューレを皮膚に4点縫合固定することが,医療事故の再発防止に向けた提言 第4号に記載されている 14)。気管カニューレの逸脱,皮下・縦隔内迷入の防止策として有用とされる。カニューレのフランジに固定用の穴が空いているタイプでは,カニューレのフランジを損傷することなく縫合糸が掛けられる構造になっている(図Ⅵ-1)。 早期に逸脱・迷入する要因としては人工呼吸器や酸素チューブによる気管カニューレへの張力がかかりやすい状態が指摘されており,患者の吸引,体位変換などのケア時には特に注意を要する。気管切開術後のケア 61糸針固定でカニューレを皮膚に4点縫合固定している。カニューレのフランジに固定用の穴が空いているタイプでは,穴に縫合糸が掛けられる。 図Ⅵ-1 気管カニューレと皮膚の縫合Ⅵ
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