■ 全身管理 温度・湿度の管理を行う。去痰剤の投与やネブライザーにより痰の排出が容易になるようにし,また抗菌薬の投与により術創の感染を防止する。3 早期合併症■ 出 血 術直後の出血は,皮膚や甲状腺断端など術創からのものが多いが,持続性で出血量が多い場合は電気凝固や結紮など止血処置は必要である。圧迫で経過観察することで,カフを超えて気管内に血液が流入し思わぬ気道のトラブルに発展することがある。■ 気腫・気胸 頸部皮下気腫,縦隔気腫,気胸が見られることがある。皮下気腫は皮膚切開創を密に縫合閉鎖することで生ずる。術創は切開線の端を緩めに合わせる程度がよい。また気管切開後,早期にカニューレを抜去して閉創すると皮下気腫を生じる。気管孔の閉鎖は早くとも4〜5日後まで待ったほうがよい。■ 肺炎・気管支炎 気管切開により下気道圧が低下し,誤嚥が起きやすくなるため嚥下性肺炎がしばしば生じる。適切な対応が必要である。4 遅発性合併症■ 出 血 遅発性の出血はカニューレ先端の機械的刺激による気管壁の損傷などによるもので,カニューレ先端に血液が付着するような場合,内視鏡により気管壁をチェックする必要がある。稀にカニューレ先端の圧迫により気管壁と腕頭動脈壁に壊死を生じ,気管腕頭動脈瘻による大出血をきたすことがある。致死的であるので,あらかじめ内視鏡によりカニューレの先端の角度が気管の走行方向に一致しているかどうかを確認しておくことが重要である。カニューレ先端の先当りによる肉芽形成や出血には,長期的に同じ位置でカニューレが当たらないように,カニューレの長さを調節できるタイプを使用するとよい。また肉芽に対してはレーザーによる切除,ステロイド含有軟膏やステロイド吸入剤をカニューレ内や周囲に使用することが効果的と報告されている。気管切開術後のケア 63がある(一般的に20〜27cmH 2O)。カフ圧が過剰になると気管壁の毛細血管の血流を阻害し,圧迫部位の気道粘膜に潰瘍・壊死を引き起こし,気管食道瘻や腕頭動脈瘻の発生する可能性が生じる。Ⅵ
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