自発呼吸なし気管切開孔をガーゼなどで閉鎖バッグバルブマスクで換気気管カニューレ抜去気管切開孔の閉鎖ガーゼなどで閉鎖する注:ただし声門上部に高度狭窄を認めない場合に限る。自発呼吸ありSpO2低下気管切開孔を酸素マスクで酸素吸入気管切開術後のケア 65気管切開孔から酸素吸入つ。気管カニューレの再挿入に固執せず気管挿管も視野に入れる。自発呼吸がある場合は,気管切開孔から酸素吸入を行い,気管切開孔の閉鎖やSpO 2の低下がある場合は気管切開孔をガーゼなどで閉鎖して口から酸素マスクで酸素吸入を行う。その間に再挿入の準備をして医師を待つことを推奨する(図Ⅵ-3)。 ただし急性喉頭蓋炎などにより声門上部に高度の狭窄がある場合には対応が異なる。このような場合には口や鼻からのマスク換気や再挿管が不可能であるため,(一例として)カニューレが抜けてしまった気管切開孔の閉鎖を防ぐために鼻鏡を挿入するなど,施設・症例ごとに対応を決めておく必要がある。つまり気管切開が行われた患者の状況と対応は,医師-看護師間での情報共有が重要である。 また,気管カニューレのカフが気管切開孔から見えた場合でも,迷入の可能性があるため看護師が押し込むことはしない。❸吸 引 気管内吸引は,呼吸循環動態の変動や気道粘膜の損傷などのリスクがある。呼吸循環動態の変調は吸引操作中の酸素飽和度モニターや心電図モニターなどで早期発見が可能である。異常時はすぐに行為をやめ,医師に報告する必要がある。 気道粘膜の損傷は,出血による血餅,分泌物の粘稠化による喀出困難などにより気道狭窄の原因になる。そのため,吸引圧は150 mmHg以下,吸引チューブの太さは気管カニューレの内径の1/2以下とし,挿入する長さは気管分岐部に達しない7〜10 cm程度を推奨する。また,吸引チューブを上下に振動させながらの吸引操作は,吸引チューブの先端で気管壁を損傷するリスクがあるので注意が必要である(表Ⅵ-1)。 図Ⅵ-3 気管カニューレが抜けた場合Ⅵ
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