* 吸引チューブで気管粘膜を損傷する可能性があるため吸引チューブは最小限の太さのものを使用することが望ましい。14Frを使用する場合は特に十分注意が必要である。 ●人工呼吸器装着時の注意点 感染防止のために閉鎖式吸引チューブを使用することが望ましく,閉鎖式ではない場合は毎回交換する。自発呼吸のある患者の場合は吸引を止めた状態で吸気時に挿入し,陰圧をかけながらゆっくり引き戻す。挿入時間は15秒以内とし,一回の操作で10秒以内の吸引を推奨する。 ●人工呼吸器離脱後の注意点 できるだけ咳嗽を促し,分泌物が気管切開孔付近に上がってきてから吸引することで気道粘膜の損傷機会を減らすことができる。気管切開により,吸気が上気道を介さないことでの粘膜乾燥や粘稠な分泌物の貯留を防ぐために,人工鼻の使用,加湿酸素,超音波ネブライザーなどで加湿することを推奨する。❹狭窄と閉塞予防 気管カニューレは,内腔に分泌物が乾燥付着して狭窄や閉塞を起こす場合がある。そのため,気管カニューレのタイプごとに対応を検討する必要がある。内筒がない気管カニューレが狭窄や閉塞した場合,気管カニューレそのものを交換する必要があり,常時保湿や加湿を考える必要がある。しかし,内筒がある気管カニューレは分泌物の性状を観察する必要はあるが,カニューレ内の狭窄や閉塞であれば取り外して洗浄することが可能であり,定期的に洗浄することで狭窄や閉塞の予防になる。人工呼吸器装着中など,内筒の洗浄を行えない状況の場合は人工鼻の使用を検討する。❺カフの管理 カフ付き気管カニューレの場合,カフの管理が必要になる。気管カニューレのカフは,人工呼吸器による陽圧換気を可能にするために存在するのであって,固定のためのものではない。カフ圧は高すぎると気管粘膜の毛細血管の血流を阻害し,粘膜潰瘍,壊死,気管腕頭動脈瘻などの発症につながる。カフ圧は20〜25 mmHgでコントロールを行うが,低すぎる圧は上気道の分泌物が流れ込むリスクが高くなるため,確認を定期的に行う必要がある。❻上気道の分泌物の流れ込み防止 カフ付きカニューレを使用している場合,喉頭に侵入した上気道の分泌物や誤嚥物はカフ上部に貯留する。大量に貯留すると,嚥下運動などでカニューレが動いたときにカフ上部に貯留した液体は下気道へ流れ込むリスクが増す。そのため,定期的なカフ上部の吸引が必要である。また,外筒に側孔があるタイプのカニューレの場合は,内筒を抜去・洗浄するときに側孔から貯留物が流れ込むため,内筒を抜去する前に必ずカフ上部を吸引する必要がある。66 Chapter Ⅵ.気管切開術後のケア気管カニューレの太さ吸引チューブの太さ8Fr以下6 mm10Fr以下7 mm8 mm以上12Fr以下 表Ⅵ-1 気管カニューレに対する吸引チューブの太さの目安
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