I.はじめに 受 付 日:2021年9月26日採 択 日:2021年11月25日J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 1, 2022原 著要旨 喉頭乳頭腫は,その多くからヒトパピローマウイルスの感染を認める喉頭の腫瘍性疾患である。組織学的には良性だが,再発率が高いことや数%の割合で悪性転化することから難治性疾患の一つと位置付けられている。本邦での主たる治療法は外科的治療であり,当科ではNd:YAGレーザーを用いた喉頭微細手術を治療の第一選択としている。当科における手術成績を評価するため,2005年6月から2019年10月までの過去14年間に外科的治療を行った喉頭乳頭腫61症例について後方視的に検討を行った。平均年齢は51.9±19.7歳で,男性は40例に対し女性は21例であった。発生様式は単発型が26例,多発型が33例であった。平均治療回数は2.3回(単発性:1〜6回,多発性:1〜17回)であった。最終治療からの平均経過観察期間は36±31週で,最終的な転帰は,単回治療後に再発を認めない例が34例,初回治療後に再発を認めた例が24例で,再発例のうち複数回手術後に残存を認めている例が6例であった。病理学的所見では悪性転化を3例に認めた。今後,ウイルス型の検査を導入したり,補助療法の治療効果について症例を蓄積したりすることが検討課題である。キーワード:喉頭乳頭腫,ヒロパピローマウイルス,喉頭微細手術,Nd:YAGレーザー連絡先著者:〒162─8655 東京都新宿区戸山1─21─1 国立研究開発法人国立国際医療研究セン ター病院 耳鼻咽喉科相良由紀子II.対象・方法 喉頭乳頭腫は声帯に生じる良性腫瘍の中の代表的疾患で,ヒトパピローマウイルス(human papillo-mavirus:HPV)の感染によって上気道に隆起性病変を生じる。主に低リスク型であるHPV6型・11型の感染報告が多い1)。 発生様式については単発性のこともあるが,多発性で再発性の強い再発性喉頭乳頭腫(recurrent la-1)国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 耳鼻咽喉科1ryngeal papillomatosis)もみられ治療に難渋するケースも少なくない2)。 治療法としては,シドフォビルなどの薬剤や薏苡仁や補中益気湯などの漢方,HPVワクチンが有用とする報告もあるが確立されてはおらず,本邦においては外科的切除が最も多く選択されている3)。 当科では設備面からNd:YAGレーザーを用いた喉頭微細手術を主に行っている。そこで当科で行った手術治療成績を評価するため,外科的治療を行った喉頭乳頭腫61例に関して後方視的に検討を行った。 対象は2005年6月から2019年10月までに当科を受診し,喉頭ファイバースコープにて表面顆粒状の隆起状病変がみられ,喉頭乳頭腫と診断された日気食会報,73(1),2022pp.1─7相良由紀子1),堤内亮博1),田山二朗1)当科で外科的治療を行った喉頭乳頭腫61症例の臨床的検討
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