日本気管食道科学会会報 第73巻1号
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図3 治療方法た。4.転帰 単回治療で再発がなかった例が34例(56%),初回治療後に再発した例が24例(39%)であった(3例は詳細不明)。再発例のうち,複数回手術後再発を認めていない例が18例,現時点で再発を認めている例が6例であった。 発生様式で比較すると,単回治療で再発がなかった34例のうち,単発性が14例,多発性が18例(詳細不明は2例)であった。複数回手術後再発を認めていない18例のうち,単発性が6例,多発性が11例(詳細不明は1例)であり,現時点で再発を認めている6例では,単発性2例,多発性4例であった。いずれの群においても多発性の方が多かった。 また,術後合併症は声帯横隔膜症を9例に認めた(表1)。5.組織型・悪性化 病理組織学的所見は,異型なしが39例,軽度異型が6例,中等度異型が2例,高度異型が7例,異型を認めるも程度不明例が4例,■平上皮癌(SCC)が3例となった。 SCCが検出された3例すべてが男性,成人発症型で,1例目は初診時年齢が41歳の男性,右声帯,単発性であった。初回手術の病理組織学的検査にて乳頭腫由来の形態で異型が高度となり悪性化していると診断された。2例目は,初診時年齢が64歳の男性,過去に2回手術歴がありいずれも高度異型を認めていたが,73歳で再再発を認め,右声帯前方3遊離面上から前方にかけて多発性病変に対して手術を行い,病理組織学的にSCCと診断された。3例目は初診時年齢60歳で,複数回の再発にて3回手術を行い,61歳時の3回目の手術の際にSCCと診断された。これらについて放射線療法などの追加治療は行われず,現時点で再発を認めていない。6.症例呈示 これまで再発を繰り返し,治療に難渋している症例を経験したので以下に報告する。症 例:33歳(当科初診)男性主 訴:嗄声既往歴および喫煙歴:なし現病歴:2001年より嗄声が出現し他院を受診した。そこで喉頭乳頭腫と診断され経過観察されていたが再発を繰り返し,手術(レーザー使用)を6回施行した。2005年に呼吸困難感を認め,喉頭内視鏡により乳頭腫病変の増悪がみられ,同年3月に当科紹介受診となった。治療経過:当科初診時では両側とも声門上から声門下にかけて乳頭腫が出現しており気道を塞ぎかけている状態であった(図4)。同月に外来にて局所麻酔下で喉頭ファイバー下単純切除により乳頭腫を減量し,気道の確保を行った後,6日後に全身麻酔下でNd:YAGレーザー照射,さらに3カ月後に残存病変に再度レーザー照射を行った。その後,再発部位に対し延べ15回治療を行い,初診から14年後の現在は声帯の前連合は声帯横隔膜症を認めており,左披裂間後方の再発病変に対して経過観察中である(図5)。日気食会報,73(1),2022

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