図5 治療難渋例の治療経過時所見図4 治療難渋例の初診時所見る結果といえる。また,大山ら11)の報告によると,成人発症型の喉頭乳頭腫は統計的に不特定複数の性パートナーを有する例に多いとされ,乳頭腫が性感染症としての側面があることが推定される。喉頭乳頭腫へのHPVの関与は1980年頃に入って証明されてきており,HPV11型が頻度として最も多く,次いでHPV6型の報告が多い12)。喜友名ら5)の報告でも,喉頭乳頭腫20例中19例(95%)にHPV感染を認め,そのうち6型が16例(84%)と多く,次いで11型が3例(16%)であり,HPVの低リスク型が占めていた。 若年発症型の多くが2〜4歳までに診断されることが多いとされており4),若年発症型の誘因として分■時の経産道感染(垂直感染)が考えられている。しかし,1993年の田中ら7)の報告で4/44例,2015年の栗田ら9)の報告で11/60例,2016年の喜友名ら5)の報告で2/15例と年々若年発症型の割合が減ってきている。これは,喉頭乳頭腫と同様にHPV6型,11型が関与する尖圭コンジローマに対して,妊娠中の早期発見および治療がなされることで改善率の上昇がみられてきているためと考えられる。本検討でも,発症年齢は9歳とやや遅かったものの若年発症型は1例のみで,発症経路に関しては垂直感染が推測される。この1例は再発を複数回繰り返しており,今後も慎重なフォローアップが必要である。 再発性・多発性の強い喉頭乳頭腫に対して現状では確立された治療法が存在しないため,外科的治療が標準的な治療とされている12)。以前は放射線療法5も選択されていたが,照射後に悪性化した症例が多く報告されたため,現在では行われていない6)。 喉頭微細手術において,さまざまなレーザーの種類が用いられており,切開や切除に際してはCO2レーザー,深部組織への蒸散にはNd:YAGレーザーが優れているなどそれぞれの機器には異なった特性がある13)。当科ではサイズにかかわらず,蒸散深達度がCO2レーザーやKTPレーザーよりも高いとされている13, 14)Nd:YAGレーザーを用いている。Nd:YAGレーザーVersaPluse® Dual 80/100 W(Lumemis社製)を使用しており,出力は10 W,レーザーファイバーを経由して,照射を行っている。レーザーの口径は0.4 mmまたは0.6 mmと比較的細いものを用いており,繊細な操作が可能である。照射方法は接触照射で,病変の中心にレーザーを接触して,切除を行っている。KTPレーザーが青色光に対しNd:YAGレーザーは無色光であり,照射中の視野の妨げにならないというメリットがあるが,正常組織への誤照射が起きてしまうという懸念点がある。この点に関しては,当科では照射部以外の部分に生理食塩水を浸したガーゼを敷いて予防を行っている。喉頭乳頭腫は上皮病変であり,切除深度は極力浅く切除することが好ましい。病変が粘膜上皮部にとどまるため,非接触照射法でも十分対応でき,近年マイクロフラップ法の適応とされている15)。しかし広基に渡った病変に対しマイクロフラップ法を用いる場合は高度な技術が必要である13)。Nd:YAGレーザーは簡便に操作を行うことができ,深達度に関しては,接触の程度および出力日気食会報,73(1),2022
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