V.まとめの加減にて変更可能である。深達度が低いと,表面しか焼■が行えず隆起が強い腫瘍病変であると深部までの照射が行いづらい。世界的に最も普及しているCO2レーザーの使用はほとんど出血なく切除できる点で有用であるが15),水分に吸収されやすい性質であり,乾燥箇所への照射および広範囲の病変の焼■時間が長いというデメリットが考えられる。また,自施設では瘢痕形成予防としては,層を確認し深部まで焼■しすぎないように慎重にレーザー照射を行う,また術後にステロイドの予防的内服を行っている。 術後合併症として声帯横隔膜症を認めた9例は,いずれも両側声帯に複数の病変を認めており,声帯の広範囲(特に前連合近傍)でのレーザー焼■が合併症のリスクになると推察される。 年齢別の再発に関して,諸家の報告では成人発症型に比べ若年発症型の方が再発率は高いとされる16)。本検討では若年発症型が1例であり十分な検証とは言えないが,9歳で確定診断をされてから6回再発を繰り返してその度に手術を余儀なくされており,過去の報告と同様に再発率が高いと考えている。また発生様式別に再発率を比較すると,多発性の方が単発性よりおよそ2倍再発率が高かった。これは多発性において再発リスクが高いとする諸家の報告と同様の結果であった14)。 悪性化症例について本報告では61例のうち3例(5%)であり,中澤ら17),栗田ら9)の報告と同様の結果が得られている。3例のうち1例については詳細不明であるが,他2例はどちらも喫煙歴があり,検討対象が少数であるが喫煙は悪性化の素因となっていると考えられる。 本研究ではHPVの型検査は行っていないが,前述のとおり喉頭乳頭腫はHPVの感染が関与していることが知られている。主な原因とされているHPV6型,11型は悪性化とは関連性が低いとされているが,その他のウイルスタイプとしてLinde-bergら18)はHPV16型が悪性化との関与が深いと示しており,Haradaら19)はまれに悪性化の高リスク群であるHPV16型,18型の感染がみられ,悪性化したとの報告がある。 治癒困難な喉頭乳頭腫に対して予防の観点から4価(6, 11, 16, 18型)HPVワクチンの有効性が報告されている20)。2006年にHPV 4価ワクチンであるGardasilがEUや北米で承認され接種が開始され日気食会報,73(1),20226 本報告の検討,発表にあたりご指導いただいた教室員の皆様にこの場を借りて深く感謝致します。 本論文に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。1) 伊藤文英,牧 清人,石井英男:当教室で経験した喉頭乳頭腫.耳鼻臨床77:637─650, 2018.2) 室野重之:喉頭乳頭腫に対する手術.頭頸部外科28(3):255─258, 2018.3) 喜友名朝則,真栄田裕行,鈴木幹夫:喉頭腫瘍とHPV感染.喉頭29:45─51, 2018.4) 室野重之:再発を繰り返すよう小児喉頭乳頭腫にどう対応するか.MB ENT;227:47─53, 2019.5) 喜友名朝則,喜瀬乗基,真栄田裕行・他:喉頭乳頭腫におけるヒト乳頭腫ウイルス感染と臨床経過.喉頭28:24─30, 2016.6) 馬越智浩,高橋廣臣,岡本牧人・他:本院における喉頭乳頭腫症例の検討.耳鼻臨床42:125─129, 1991.7) 田中康政,田中信三,平野 実・他:喉頭乳頭腫の臨床統計.耳鼻臨床 補62:47─55, 1993.8) Cohn AM, Kos JT 2nd, Taber LH, et al:Recur-ring laryngeal papilloma. Am J Otolaryngol 2:129─132, 1981.9) 栗田 卓,梅野博仁,千年俊一・他:喉頭乳頭腫60例の臨床統計.日耳鼻118:192─200, 2015.た。その後,Gardasilを接種することですでに発症している喉頭乳頭腫の再発を抑制できる可能性が示唆された21)。また,WHO(世界保健機関)はHPVワクチンの安全性と有効性を繰り返し確認し,子宮頸癌およびHPV関連疾患予防のため,その接種を強く推奨している22)。 本報告では病理組織学的所見しか検討しておらず,再発や悪性のリスク評価として組織中のHPVの有無やウイルスの型について同定が必要と考えている。また,HPVワクチンの国内普及や抗ウイルス薬などの新規薬剤の早急な開発が望まれる。 当科において喉頭乳頭腫に対して外科的治療を行った61例について後方視的に検討を行った。Nd:YAGレーザーを用いた喉頭微細手術では,諸家と同様な治療結果が得られた。約4割に再発がみられ手術治療により経過は良好であるが,さらなる有効な治療法の確立が望まれる。文 献
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