日本気管食道科学会会報 第73巻1号
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図1 気管傍郭清と治療後の甲状腺ホルモンおよびビタミンD3製剤内服率との関係日気食会報,73(1),2022病理学的T stage病理学的リンパ節転移病理学的N stage病理学的リンパ節転移表3 病理学的T stage, N stageと気管傍リンパ節転移の関係pT47/6411%pT21/119%pT1──pN00/130%pN10/140%10有無で層別化した場合,気管傍リンパ節転移なし群においていずれの生存率も良好であり,統計学的有意差を認めた。気管傍リンパ節郭清の患側のみ群と両側群の間に統計学的有意差は認めなかった。 今回の検討で気管傍リンパ節転移は,患側117例中13例(11.1%)であったが,健側は郭清を行った22例中1例(4.5%)のみであった。経過観察中に気管孔周囲再発を認めた1例は,患側のみ気管傍郭清を施行した症例の健側であった。再発例の術前診断はcT4aN2cM0で術後診断はpT4aN2bであり,患側の気管傍リンパ節に転移は認められなかった。術後に放射線療法が施行されていたが,健側の気管傍リンパ節領域は照射野に含まれていなかった。手術から1年7カ月後に健側の気管孔周囲再発が認められたため,シスプラチン併用化学放射線療法と全身化学療法を行った。その後再発転移なく,手術から13年4カ月後に他癌死(中咽頭癌に対し化学放射線療法後,遺残が認められたが手術拒否)された。pT35/4212%pN2b7/51pN3pN2a2/61/425%14%10%33%pN2c3/294. 気管傍郭清と治療後の甲状腺ホルモン,ビタミンD3製剤内服の関係 気管傍郭清と治療後経過観察中における甲状腺ホルモン,ビタミンD3製剤内服の有無との関係を図1に示す。治療後甲状腺ホルモン内服率は,患側のみ郭清群95例中59例(62%),両側郭清群22例中19例(86%)であり,両群間に統計学的有意差を認めた。両側郭清群22例中16例は甲状腺全摘,残り6例は健側甲状腺片葉が温存されていた。この6例中3例は甲状腺ホルモンの内服を必要としなかった。治療後ビタミンD3製剤内服率は,患側のみ郭清95例中8例(8%),両側郭清22例中17例(77%)であり,両群間に統計学的有意差を認めた。副甲状腺移植が施行された症例はなかった。5.予後について 図2に全体および気管傍リンパ節転移の有無,気管傍リンパ節郭清で層別化したカプランマイヤー曲線を示す。全症例の5年粗生存率は52.8%,5年疾患特異的生存率は68.1%であった。粗生存率および疾患特異的生存率について気管傍リンパ節転移の

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