日本気管食道科学会会報 第73巻1号
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等による保存的療法を行って炎症が軽快した時期に検査を行うべきであるという報告が多い12)。しかし診断には複数回の下咽頭食道造影検査が必要になることも少なくなく,中多ら13)は確定診断までに平均で1.7回を要し,診断までに炎症消退後11カ月を要した症例もあったと報告している。この理由として,感染直後は瘻管周囲の肉芽形成や粘膜浮腫を図5 術中所見a. FK-WOリトラクターで展開し,左梨状陥凹の外側に瘻孔を確認(矢頭).b. ピオクタニンで瘻管を染色(矢頭).c. 瘻管(矢頭)は甲状軟骨下角(T)の外側で甲状咽頭筋(M)へ侵入していた.d. 甲状咽頭筋内に膿瘍形成(*)を認めた.e. 瘻管摘出後.甲状軟骨下角と甲状咽頭筋を確認.f. 切開粘膜部は4─0吸収糸で縫合した(矢印).図6 手術にて摘出した検体a. 約1 cm程度の瘻管を摘出した.b. (HE染色40倍)摘出検体は異形の乏しい上皮にて囲まれた瘻管構造であり,周囲に炎症細胞浸潤を伴っていた.悪性所見は認めなかった.17生じることを指摘している。1回の造影検査で瘻管が造影されないことも多く,下咽頭梨状陥凹瘻を疑った症例では炎症の消退後に繰り返し下咽頭食道造影検査を施行することが重要である。本症例では感染から約2カ月間と十分な消炎期間を設けた上で下咽頭食道造影検査を施行し,初回の検査で診断に至ることができた。一方で,下咽頭ファイバースコー日気食会報,73(1),2022

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