III.考 察を作成し,縫合不全部の上下に位置するようにした。さらに膿瘍腔を縮小させるため,食道内腔から縫合不全部を介して膿瘍腔内にドレナージチューブを挿入した。また栄養管理目的で,経鼻的にトライツ靭帯を越えて空腸内に栄養チューブを留置した。 膿瘍腔内および縫合不全部の間欠的ドレナージにより,膿瘍腔は徐々に縮小した。術後34日目(ドレナージ開始から26日)で膿瘍腔は瘻孔化し(図5c),術後47日目(ドレナージ開始から39日)に縫合不全が完全に治癒した(図5d)。術後51日目から経口摂取を開始し,術後64日目に自宅退院となった。現在,術後4年6カ月が経過しているが再日気食会報,73(1),2022図5 造影検査(a)縫合不全部および膿瘍腔の確認(→:縫合不全部,★:膿瘍腔内).(b)ドレナージチューブ留置時.(ア)縫合不全部を介して膿瘍腔内にドレナージチューブを留置した.(イ)縫合不全部の減圧目的で,チューブを縫合不全部近傍に留置した(→:縫合不全部).チューブ先端付近に側孔(矢頭)を2カ所作成し,側孔間に縫合不全部が位置するようにした.(ウ)栄養チューブをトライツ靭帯を越えて空腸内に留置した.(c)膿瘍腔の改善および縫合不全部の瘻孔化(→:瘻孔部).(d)縫合不全改善の確認(→:縫合不全痕跡).32発は認めていない。 切除不能食道癌に対して,dCRTを施行し部分奏効/完全奏効となる症例は少なからず認められる1)。その一方でdCRT後に遺残・再発や異時性の重複癌を認めることもあり2),治療に苦慮する症例も多い。食道癌取扱い規約 第11版3)では,サルベージ手術の定義を“放射線線量が50 Gy以上の根治的(化学)放射線療法後の癌遺残または再発に対する手術”としている。dCRT後のサルベージ食道切除術は,術後死亡率や合併症発生率が高く4),また手
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