図5 図4中の内腔Aの上皮および内腔の拡大写真.管腔構造をもち,線毛円柱上皮で裏打ちされ,粘膜下層には線維組織が見られる.図6 図4中の内腔Bの拡大写真.線維組織内に上皮をもたない気腫状の所見を認めている.し,これらを剥離していくと,白線を介し気管前面へと向かっていた。これを追跡していくと気管前壁の一カ所に集約された(図3※)。皮膚・瘢痕組織を気管から切除し,付着していた気管前壁の不整な軟骨を除去した。気管との交通を確認したところ,ピンホール程度であったため硬性再建は不要と判断し,気管外壁の線維組織を巾着状に縫縮し閉鎖した。その上に生理的組織接着剤を散布し,さらに胸骨舌骨筋皮弁を充填し補強した。閉鎖式ドレーンを留置し,皮膚縫合を行い手術終了とした。病理組織所見:検体は皮下組織を含む皮膚片であり,2つの小腔から構成されていた(図4)。小腔Aは気管軟骨に近接しており,内腔は線毛円柱上皮で裏打ちされていた(図5)。対して,皮膚に近図2 手術時の皮膚切開線.皮膚瘢痕を合併切除するため楔状の切開線を設定した.図3 手術中の写真.皮膚から連続する瘢痕組織は,白線を介して深層へ連続しており,気管前壁の一カ所に集約された(※).日気食会報,73(1),202238い小腔Bは上皮を欠いていた(図6)。術後経過:頸部をガーゼおよび弾性テープで圧迫固定した。術後3日目ドレーン抜去とともに圧迫固定を解除した。術後5日目に抜糸を行い,同日退院とした。術後は気道内圧上昇を避けるため,咳嗽・大きな声での発声を避けるよう指導し,一定期間の図4 手術により摘出された,皮膚および皮下組織,嚢胞性病変のHE標本.術前に気管周囲の嚢胞として示された病変は,2つの小腔で構成されていた.管腔構造をもつ小腔Aは矢印で示され,小腔B*は気腫様の構造を呈している.
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