日本気管食道科学会会報 第73巻1号
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図1 アキャルックス®の作用機序(小林久隆先生より提供1))690 nmのレーザ光を照射することでアキャルックス®の色素が励起され,細胞膜の脂質二重膜を急速に傷害する生物物理学的プロセスを誘発し,腫瘍細胞を壊死させる.43とが期待されている2〜4)。3.適応 「切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部癌」で化学放射線療法等の標準的な治療が可能な場合にはそれらの治療を優先する。頭頸部非■平上皮癌ではEGFRの発現を確認して実施する。4.治療の実際 ①アキャルックス®投与 入院にて行う。投与中および投与後4週間は光曝露対策が必要となる。前投薬として副腎皮質ホルモン,抗ヒスタミン薬を静注した後にアキャルックス® 640 mg/m2を2時間以上かけて点滴静注する。投与終了後も身体症状の観察を行い,インフュージョンリアクション等の有害事象に備える。 ②光照射 アキャルックス®投与終了から20〜28時間後に光照射を実施する。全身麻酔下にニードルカテーテルで■刺して円柱状に照射するシリンドリカルディフューザー,表面から照射するフロンタルディフューザーを用いて照射を行う。シリンドリカルディフューザー100 J/cm,フロンタルディフューザー50 J/cm2の照射量とされており,適宜両者を併用して実施する。照射時間は1サイクル4〜5分で病変の大きさにより複数回にわけて行う(図2)。日気食会報,73(1),20221.はじめに イルミノックス治療とは,イルミノックス®と呼ばれる楽天メディカル独自の技術基盤を用いて開発された薬剤と光照射による癌の治療をいい,米国国立癌研究所で開発された新しい治療法である1, 2)。イルミノックス®は,医薬品,医療機器,医療技術,その他周辺技術を総合した技術基盤の総称で特定の医薬品や医療機器を指す呼称ではない。ここでは,本邦で承認されたアキャルックス®(一般名:セツキシマブ サロカロタンナトリウム)点滴静注とレーザ光照射による頭頸部癌治療をイルミノックス治療として説明する。2.作用機序 アキャルックス®は,キメラ型抗ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)モノクローナル抗体(IgG1)であるセツキシマブと光感受性物質である色素IR700を結合させた抗体─光感受性物質複合体である。医療機器のBioBladeレーザシステムからの690 nmの光を照射することによって,アキャルックス®の色素が励起され,腫瘍細胞の細胞膜を傷害する生物物理学的プロセスを誘発し,腫瘍細胞を壊死させると考えられている(図1)。殺細胞作用の誘導には抗原・抗体結合および光感受性物質の活性化が必要なため,癌細胞のみを選択的に破壊すると同時に,腫瘍細胞を取り巻く正常組織の損傷を最小化するこ用 語 解 説光免疫治療(イルミノックス治療)

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