現在わが国では,COVID-19ワクチンの前後2週間は他ワクチン投与を避けている。そのため,インフルエンザワクチンと同時期の投与は医療機関の負担が大きい。本論文は,両者の同時投与の安全性を検討したものである。 COVID-19とインフルエンザワクチンの併用投与は,医療システムへの負担を軽減する可能性があるため,この研究ではCOVID-19ワクチンと不活化インフルエンザワクチンの併用投与の安全性と免疫原性を調査した。 2021年4月1日〜6月26日に英国にある12施設で,新型コロナワクチン(ChAdOx1〈アストラゼネカ〉またはBNT162b2〈ファイザー〉)の初回接種を受けた成人679人を登録し,以下の6グループに分けて検討した。・ ChAdOx1+培養細胞4価インフルエンザワクチン:129人・ BNT162b2+培養細胞4価インフルエンザワクチン:139人・ ChAdOx1+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン:146人・ BNT162b2+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン:79人・ ChAdOx1+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン:128人・ BNT162b2+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチン:58人 その後,新型コロナワクチンの2回目接種と同時にインフルエンザワクチンもしくはプラセボを接種し,その3週間後にインフルエンザワクチン接種者にはプラセボを,プラセボ接種者にはインフルエンザワクチンを接種し,6週間観察した。前者には340人,後者には339人が無作為に割り付けられた。主要評価項目は,インフルエンザワクチンもしくはプラセボの接種後7日間に参加者から報告された1つ以上の特定全身反応であり,差が25%未満日気食会報,73(1),202246であれば非劣性とした。また,局所および非特定全身反応,体液性応答も評価した。 結果として,6グループのうち,ChAdOx1+培養細胞4価インフルエンザワクチン,BNT162b2+培養細胞4価インフルエンザワクチン,BNT162b2+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン,ChAdOx1+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチンの4グループでは非劣性を示した。一方,ChAdOx1+MF59Cアジュバント添加3価インフルエンザワクチン,BNT162b2+遺伝子組換え4価インフルエンザワクチンでは,95%CIの上限が非劣性マージンを超えた。 ワクチン接種による全身反応のほとんどが軽度もしくは中等度で,局所および非特定全身反応の割合は,無作為に割り付けられた2群間で同様だった。重篤な有害事象は重度の頭痛による入院の1件で,試験的介入に関連していると考えられた。また,免疫応答への影響はなかった。 本研究の強みは,妊娠中,重度の制御不能な医学的問題,免疫不全,または65歳以上の個人を除外しておらず,試験集団が両方のインフルエンザに感染する可能性が最も高い集団を反映していることである。一方で,本研究はSARS-CoV2中和抗体データがないため,体液性応答の評価が制限され,T細胞応答も評価されていない。細胞性免疫が自然のSARS-CoV2感染に対する防御に役割を果たしていること,ワクチンによって誘発される細胞性応答が中和抗体に対して独立して振る舞う可能性があることなどは明らかであり,同時ワクチン接種に対するT細胞応答を調査するさらなる研究が必要であろう。 いずれにせよ,新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを一緒に接種することで,ワクチン接種のための医療現場の負担が軽減され,ワクチンが必要な人々へのタイムリーなワクチン投与とCOVID- 19とインフルエンザの予防が可能になるであろう。 (板橋区医師会病院 高橋典明)外国文献紹介(抄録)外国文献紹介(抄録)題 名: Safety and Immunogenicity of Concomitant Administration of COVID-19 Vaccines (ChAdOx1 or BNT162b2) with Seasonal Influenza Vaccines in Adults in the UK (ComfluCOV):A Multicentre, Randomised, Controlled, Phase 4 Trial著者名:Lazarus, R., Baos, S., Cappel-Porter, H., et al.誌 名: Lancet 2021 Nov 11;https://doi.org/10.1016/S0140-6736(21)02329-1
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