日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション2嚥下障害に対するチーム医療本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1)東京都保健医療公社荏原病院 耳鼻咽喉科・摂食嚥下支援センター136けた感染対策への取り組みを行うべく,QCサークル活動(QC=Quality Control, QCサークル活動とは同じ職場内で品質管理活動を自発的に小グループで行う活動全般を指す経営学的用語)を発足した。以下の項目を実施した。①2020年4月に食事と食事に関連した処置での感染リスクと感染予防策に関する知識の把握を目的として,院内メール・共有板を用いて,感染対策啓発資料をオンライン配布した(図1)。②啓発内容の確認目的に資料の内容に関する確認テストをGoogle Formを用いて施行した。③感染対策の定着度を調査する目的で②と同様の調査を2020年10月にも施行した。約3000人のCO-VID-19患者の受け入れを行ってきた当院において,未だに職員を介した感染は生じておらず,QCサークル活動も間接的に感染防止に寄与したのではないかと自負している。3.コロナ専門病院化後の嚥下障害診療 2020年4月に日本嚥下医学会より「新型コロナウイルス感染症流行期における嚥下障害診療指針」が公開され,嚥下障害診療の場面別に感染対策についての詳細が述べられている1)。最初の緊急事態宣言が解除された2020年6月以降は,当センターでもこの指針に則り,多職種による介入を再開していた。 2021年1月,第3波による感染者数の急増により,東京都は1月初旬に都立広尾病院,公社豊島病院,公社荏原病院の3病院をコロナ「重点医療機関」に指定し,事実上のコロナ専門病院へ転用した。当院(定床461床)は2020年末までは全12病棟のうち3病棟を感染症病棟に,残りの9病棟を一般病棟として運用していたが,専門病院化により一般病棟5病棟を一旦閉鎖したうえで,2021年1月27日より7病棟を感染症病棟として運用を開始し日気食会報,73(2),20221.当院における嚥下障害診療体制 当院は2019年4月に耳鼻咽喉科医師,歯科医師,摂食・嚥下障害認定看護師,言語聴覚士,理学療法士,薬剤師,管理栄養士,歯科衛生士で構成される摂食嚥下支援センターを設置した。COVID-19流行前までの活動は,主に入院患者を対象として,主治医からの依頼を振り出しに,耳鼻咽喉科医による嚥下機能評価,歯科医師・歯科衛生士・看護師による嚥下回診,リハビリテーション(言語聴覚士/理学療法士/作業療法士),栄養指導,服薬指導・調整を行いながら,週に1度のカンファランスで症例検討を行い,主治医への助言や退院支援カンファランスなどにより紹介医や訪問診療医,施設職員への情報提供を行うなど,個々のメンバーが各職種の視点から縦横無尽に介入する包括的なシステムを構築している。2. COVID-19の流行早期における当センターの対応 当院は第一種感染症指定病院であることから,2020年1月29日に武漢からの帰国チャーター便の発熱者4名を受け入れたのを皮切りに,ダイヤモンドプリンセス号や大規模院内感染の症例を流行早期から多数受け入れてきた。これらの患者情報を精査するなかで,院内感染の発端は「誤嚥性肺炎」と診断されていた患者が実はCOVID-19であった,あるいは食事や気管切開管理の場面を介しての感染など,嚥下障害診療の場面で感染拡大が生じていることが判明した。 そこで,当センターでは2020年3月末から嚥下内視鏡検査や嚥下回診,カンファランスを一旦休止し,メンバー全体の感染対策とさらに院内全体に向COVID-19患者の嚥下障害へのチーム医療─東京都コロナ「重点医療機関」の立場から木村百合香1)

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