J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション3嚥下性肺炎のリスクと予防第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)浜松医科大学 外科学第二講座,2)磐田市立総合病院 外科,3)浜松医科大学 周術期等生活機能支援学講座145日気食会報,73(2),20221.背景 胸部食道癌に対する食道切除術は侵襲が大きく,術後合併症の多い手術である。食道癌術後合併症の中でも誤嚥性肺炎は発症頻度が高く,発症した場合は長期予後を有意に悪化させることが報告されている。従来からの右開胸食道切除術に対して,胸腔鏡下食道切除術やロボット支援下食道切除術のような低侵襲手術の導入により手術侵襲の軽減が図られ,術後合併症の減少や発症後の重篤化予防などが期待されている。2.対象と方法 2009年8月から2021年4月まで当院で胸部食道癌に対して右開胸(胸腔鏡下およびロボット支援下含む)開腹(腹腔鏡下含む)胸部食道亜全摘胃管再建術を施行した272例を対象とした。右開胸群(A群),胸腔鏡下群(B群),ロボット支援下群(C群)の3群に分けて,短期成績について検討を行った。坊岡英祐1),羽田綾馬1),曽根田亘1),川田三四郎1),村上智洋1),松本知拓1),森田剛文1),深澤貴子2),菊池寛利1),平松良浩3),竹内裕也1)胸部食道切除術における嚥下性肺炎のリスクと予防3.結果 全272例の内訳はA群:110例(40.4%),B群:127例(46.7%),C群:35例(12.9%)であった。Clavien-Dindo分類(CD)でGrade2以上の誤嚥性肺炎は55例(20.2%)に認め,A群:26/110例(23.6%),B群:24/127例(18.9%),C群:5/35例(14.3%)で有意差はないがC群はA群の約半数であった。また嚥下障害(CD≧2)は67例(24.6%)に認め,A群:22/110例(20.0%),B群:45/127例(35.4%),C群:0/35例(0%)とC群はA群,B群いずれとも比較し有意に少なく,1例も認めなかった。4.結論 胸部食道癌に対する食道切除術において,ロボット支援下食道切除術の導入は,嚥下障害を有意に減少し,誤嚥性肺炎を減少させる可能性が示唆された。
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