J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション4フレイルとがん薬物療法第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録 高齢患者に対する治療は増加傾向であるものの科学的なエビデンスの創出は未だに乏しい。われわれは現在,詳細な現状把握目的に70歳以上の治療対象となるすべての食道癌患者に対する治療前高齢者機能評価を導入した前向き観察研究を開始(E-Choice試験:良いチョイス試験)。この前向き観察研究では治療後の高齢者機能評価も実施し経時的な身体機能低下を含めて評価を行っている。これらの検討により患者のQOLや寝たきり度などに基づいて単に治癒を目指すだけではなく真に望ましく効果的な治療方法とその選別基準を明らかにできる。ま1)慶應義塾大学医学部 腫瘍センター148た治療困難な対象に対するmodifyは医療者の裁量で行われていることも判明している(Esophagus 2018)。われわれは客観的な指標を構築するため高齢者向け化学放射線療法(PTX+放射線療法:phase I)を行っている。これらの研究により得られた結果をもとに意思決定支援ツール作成による治療最適化を目標としている。ただし,これらの結果解釈は食道癌専門家だけで評価するのではなく最終的には幅広い研究者(生命医療倫理研究者,看護研究者など)や患者および患者家族など一般市民を交えて最終的な結論を導き出すことがのぞましい。日気食会報,73(2),2022フレイルとがん薬物療法浜本康夫1)
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