日本気管食道科学会会報 第73巻2号
113/167

J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション4フレイルとがん薬物療法第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科)149日気食会報,73(2),20221.背景 術前化学放射線療法後の肺切除は合併症の頻度が高いとの報告があり,術前に合併症を予測する因子を同定することにより,合併症低減に寄与する可能性がある。骨格筋量減少状態(サルコペニア)はフレイルとの繋がりが高く,多くの悪性腫瘍で予後や術後合併症の予測因子と報告されている。2.目的 非小細胞肺癌症例における術前化学放射線療法(NACRT)前後の骨格筋量と骨格筋量の変化が術後合併症発生に及ぼす影響を検討した。3.方法 対象は当科にてNACRT後に完全切除を行った非小細胞肺癌41例。NACRT前,後(術前)のCT画像より第12胸椎レベルの傍脊柱筋面積を測定し,身長で補正したSkeletal muscle area index(SMAI)を算出した。NACRT前のSMAIが中央値以下の21例をサルコペニア群,高い20例を非サルコペニア群とした。また,NACRT後/前のSMAI比を算出し,SMAI比が中央値以下の21例をSMAI減少群,高い20例をSMAI維持群とし術後合併症との関連を検討した。長野太智1),渡部健二1),奥 結華1),小齋啓佑1),小野雄生1),原武直紀1),河野幹寛1),竹中朋佑1)術前化学放射線療法を施行した肺癌切除例における 骨格筋減少の意義4.結果 年齢中央値:66(43─76)歳,臨床病期IIA/IIB/IIIA/IIIB:2(4.9%)/5(11.2%)/28(68.3%)/6(14.6%),放射線量中央値:40(30─66)Gy,葉切除/2葉切除/全摘:30(73.2%)/4(9.7%)/7(17.1%),他臓器合併切除:20(48.8%,骨切除9例,大血管切除再建5例など)であった。CD分類III以上の術後合併症は9例(22.0%,肺瘻遷延4例,膿胸1例など)に認めた。術死,在院死は認めなかった。SMAI減少群とSMAI維持群で臨床病理学的因子や,併存疾患,術中出血量等に有意差はなかったが,術後合併症がSMAI減少群に有意に多かった(38.1%vs 5.0%,p=0.0205)。多変量解析にて,SMAI減少群は術後合併症の独立した予測因子であった(SMAI減少群:OR 13.9, 95%CI 1.24─156,p=0.0328)。5.結論 NACRT前後でのSMAI減少は術後合併症発生に関連を認めた。導入療法後に根治切除を予定する進行症例においては,導入療法時からの栄養やリハビリへの介入が合併症低減に寄与する可能性がある。

元のページ  ../index.html#113

このブックを見る