J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション5高齢者の呼吸栄養リハビリテーション第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録 慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患では安定期に,薬物治療をしても,呼吸困難,咳嗽,喀痰などの呼吸器症状が十分改善しない患者が多く,呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハビリ)が必要となってくる。呼吸リハビリとは運動療法のみではなく,栄養管理や薬物管理などを含む包括的な介入方法であると定義されている。安定期におけるリハビリテーションの必要性と有効性は疾患によって異なるが,COPDに対する呼吸器リハビリの有効性は確立されており,薬物療法とならんで,主要な治療法の一つとされている。コックランに掲載されているメタ解析でも,運動訓練を含む呼吸リハビリは,安定期COPD患者の運動耐容能,健康関連QOLを高いエビデンスレベルで改善するとされており,われわれが独自に実施したシステマティックレビューでは,呼吸困難感も有意に改善することを報告している。間質性肺炎に対する呼吸リハビリもエビデンスが集積しつつあ1)近畿大学医学部 リハビリテーション医学152り,ランダム化比較試験で運動耐容能,健康関連QOL,呼吸困難感の改善効果があることが報告されており,ガイドラインでも推奨されている。一方で,COPD患者では年々骨格筋量が低下することが知られており,予後予測因子の一つであることが報告されている。このような骨格筋量の低下の原因としては,COPD患者の非活動性,全身性炎症,基礎代謝量の増加,栄養状態の悪化などが原因と考えられている。COPD患者における栄養療法に関しては確立されたものはないが,栄養補助療法により,呼吸リハビリの効果が増強したという報告があり,メタ解析でも栄養補助療法で運動耐容能とQOLが改善するとコックランで報告されている。COPDや間質性肺炎のような慢性呼吸器疾患患者に対する呼吸リハビリではこのような栄養療法と運動療法を組み合わせることでより効果を高められることが期待される。日気食会報,73(2),2022慢性呼吸器疾患に対する呼吸栄養リハビリテーション東本有司1)
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