日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022パネルディスカッション5高齢者の呼吸栄養リハビリテーション第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録聖隷佐倉市民病院 1)耳鼻咽喉科,2)摂食嚥下センター ある程度病状が進行した嚥下障害症例の多くは経口摂取量の不足から全身の筋力低下状態であるサルコペニアに陥っている。この状態では積極的な嚥下リハビリテーションを行おうとしても,体力低下のために機能回復が十分に進まなくなってしまう。患者の栄養治療は栄養サポートチーム(NST)が積極的に介入し症例ごとの必要栄養量をハリス・ベネディクトの式を参考に決定し,経口摂取で不足する量に応じて,補助栄養食品の追加に始まり,末梢点滴・中心静脈栄養(PICCを含む)などの頸静脈栄養や経鼻胃管・胃瘻(PTEGを含む)などの経腸栄養を予想される治療期間に応じて追加していく。リハビリテーションは嚥下のみではなく歩行などの理学療法も加わることが多いので,思っている以上の必要栄養量になることがあるので,リハビリテーションスタッフと連携してタンパク質やアミノ酸を中心に栄養負荷をしていく。元々,嚥下運動と呼吸運159動の関係をみていくと,嚥下中に確実な呼吸停止が必要であるし,もし,食物や唾液の喉頭侵入や誤嚥の際に十分な咳嗽で異物を喀出することができないと肺炎につながってしまう。嚥下訓練の一環として呼吸リハビリテーションを行うことは,ごく当然のことと思う。呼吸リハビリテーションでは,重症例では排痰を目的とした姿勢調整や呼吸理学療法を理学療法士に担当してもらう。同時に,四肢体幹の安定性も調整する。ある程度の自己排痰が可能な症例や外来症例などでは自主訓練としての咳嗽訓練・強制呼気訓練や腹式呼吸の指導も積極的に行っていく。当院では,ある程度長期のリハビリテーションや外科的治療が必要になる重度な嚥下障害例が対象になることが多く,上記のように嚥下訓練に並行して栄養治療と呼吸リハビリテーションをほぼ全例に行っているので,その詳細を報告した。日気食会報,73(2),2022津田豪太1), 2),我妻将喜1), 2)摂食嚥下障害に対する呼吸栄養リハビリテーション

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