日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)北里大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科,2)防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学16090分後の気管を採取しリン酸化ERK発現を定量評価した。 (4)阻害剤を単回投与した焼■群,連日(5日間)投与した焼■群における1週間後の狭窄率を無治療焼■群と比較した。3.結果 (1)焼■群は無処置群と比較して,1週間後の狭窄率が上昇した。 (2)焼■5分後にリン酸化発現が上昇し,以降は低下した。 (3)阻害剤投与群ではControl群と比較し,焼■後のリン酸化ERK発現の著明な低下を認めた。 (4)狭窄率を無治療群と比較すると,阻害剤単回投与群では有意な低下は認めなかったが,連日投与群では有意に低下した。4.結論 本マウスモデルは気管狭窄新規治療法研究に有用である。リン酸化ERKは熱傷後早期に上昇し,MEK阻害剤の連日投与により1週間後の気管狭窄が抑制されることを確認した。ERKは気管狭窄新規治療法の標的となる可能性がある。日気食会報,73(2),2022pp.160─1681.背景 気管狭窄は熱傷や長期挿管・レーザー治療後などの過剰な創傷治癒反応により限られたスペースに余剰な肉芽,瘢痕を生じる難治性の疾患である。瘢痕組織を除去しても手術侵襲により再び瘢痕が生じる。近年mitogen-activated protein kinase(MAPK)経路における細胞外シグナル調節キナーゼExtra-cellular signal-regulated kinase(ERK)が創傷治癒に関与するとの報告がある。われわれはERK経路の阻害が気管狭窄の治療標的となる可能性があると考えた。2.方法 (1)マウス気管狭窄モデルを作成した。気管切開後,気管孔上方の気管前壁を焼■し,1週間後に摘出し狭窄率を評価した。 (2)無処置,焼■5分後,30分後,90分後の気管を摘出し,WBにてリン酸化ERK発現を定量評価した。 (3)ERK上流に位置するMAPK/ERK kinase(MEK)阻害剤を焼■30分前に投与した群とCon-trol群(DMSO投与),それぞれ焼■5分,30分,Extracellular signal-regulated kinase経路阻害による気管狭窄マウスモデルの狭窄予防効果木村朱里1),荒木幸仁2),栗岡隆臣2),茂木沙千代1),塩谷彰浩2),山下 拓1)気管食道領域の基礎研究ワークショップ1

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