日本気管食道科学会会報 第73巻2号
125/167

J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録東京大学 1)摂食嚥下センター,2)耳鼻咽喉科・頭頸部外科 近年,医療に工学的な理論や技術手法を導入することによって,臨床医のみでは達成し得ない新たな技術や治療法が開発されている。例えば,超高解像度内視鏡システムの開発や医用画像処理法の進歩により,さまざまな病態の診断や評価が可能となった。また,分子生物学的手法の発達により,疾患の病態機序解明や関連遺伝子の同定などが進んでいる。本講演では,気管食道領域においてわれわれが行っている医工学連携研究と分子生物学的研究について紹介する。1.嚥下のバーチャルリアリティー(VR) 嚥下時の詳細な動態的な構造評価には嚥下CTが有用である。嚥下CTを臨床で効率的に利用するため,再構成時間を短縮し,廉価なシステムで360度自由に嚥下動態を観察できるシステムを開発した。2.ハンズフリー型電気喉頭 電気式人工喉頭は話す際に片手が塞がり,機械音で限定された音域しか出すことができないという問161題に対し,広い周波数帯域を安定して出せる振動子の工夫やウェアラブルデバイスとしての設計を進めている。3. 上・下気道における新型コロナウイルス感染症の関連タンパク発現 上・下気道における新型コロナウイルス受容体のACE2,ウイルス侵入を補助するプロテアーゼ2種類(TMPRESS2,Furin)の発現について検証した。4.造影剤や増粘多糖類誤嚥による肺障害性の検証 硫酸バリウムやヨード性造影剤,とろみ付加に使用する増粘多糖類誤嚥による肺への影響について,組織学的・分子生物学的検証を行った。5.再発性呼吸器乳頭腫症の背景機序 乳頭腫の遺伝子発現解析を通して,腫瘍増殖の背景にある炎症細胞の関与や,潜伏期と増殖期を繰り返す感染サイクル機序を検証した。今後,気管食道領域における研究活動を活発に進めていきたい。日気食会報,73(2),2022気管食道領域での工学技術と分子生物学的技術利用上羽瑠美1),2)気管食道領域の基礎研究ワークショップ1

元のページ  ../index.html#125

このブックを見る