日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)近畿大学医学部 呼吸器外科168−80度で保存した。この血漿を197遺伝子の変異を検出可能なCancer personalized profiling by deep sequencing(CAPP-Seq)(Roche Diagnos-tics)を用いて解析した。3.結果 術前血漿でctDNAが検出されたのは8例(40%)であり,陰性と比較して,病理学的腫瘍径と有意に関連していた(p=0.02)。術後のctDNA陽性は4例(20%)であり,陰性と比較して,低分化と有意に関連していた(p=0.03)。また,術後ctDNA陽性例は陰性例と比較して有意に無再発生存期間が短縮していた(2年無再発生存率:25%vs 85%,p=0.015)。術前のctDNA陽性予後不良な傾向であったが統計学的には有意差はなかった(2年無再発生存曲線:50%vs 85%,p=0.13)。4.結論 本研究では特に術後のctDNA陽性が再発を予測し得るバイオマーカーとなる可能性が示された。本ワークショップでは自験例を紹介するとともに本領域における現時点でのエビデンスと今後の展望について総括する。日気食会報,73(2),20221.背景 近年,腫瘍由来血漿中可溶性DNA(circulating tumor DNA:ctDNA)を検出し,バイオマーカーとして利用することがさまざまな癌種において検討されている。進行肺癌の診断,治療においては,liquid biopsyを用いたEGFR遺伝子変異の検出は既に保険収載されており,包括的ゲノムプロファイリングであるFoundation one liquidがんゲノムプロファイルも既に製造販売承認されている。しかし腫瘍量が比較的少ない外科切除を受ける患者において,ctDNAの有用性は未だ十分明らかであるとはいえない。われわれは,根治切除手術後も体内にまだ残存していると想定される微小残存病変(mini-mal/molecular residual disease:MRD)の検出にctDNAを用いて,検出の有無に影響する因子や予後との関係について検討した。2.対象・方法 対象は2018年1月から2019年5月に,当科で切除した臨床病期IIA─IIIA期の原発性肺癌20例。術前および術後6.3日(3─12日)の採取した血液を1600×■で10分間遠心分離し,血漿(3─4 ml)を小原秀太1),須田健一1),藤野智大1),濱田 顕1),千葉眞人1),下治正樹1),武本智樹1),宗 淳一1),光冨徹哉1)肺癌切除症例におけるctDNA解析の有用性気管食道領域の基礎研究ワークショップ1

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