日本気管食道科学会会報 第73巻2号
134/167

 TP53遺伝子はがん抑制遺伝子であり,その免疫染色(IHC)は癌診断の参考にされている。TP53- IHCは遺伝子変異との相関が示唆されているが,そのAI診断は確立していない。J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録がん研有明病院 1)消化器外科,2)病理部,3)順天堂大学大学院 上部消化管外科学,4)九州大学大学院 消化器・総合外科,5)九州がんセンター 消化器外科,6)熊本大学大学院 消化器外科学1.背景2.目的 AIによるTP53IHCのTP53変異パターン診断法を確立し,その正診率を明らかにする。3.方法 食道胃接合部腺癌240症例のFFPE連続切片を作成し,TP53IHCと,FFPE由来DNAの次世代シーケンス結果との相関関係を解析した。IHCはA)染色あり,B)染色なしに二分し,3種類の変異パターン[a)missense/inframe変異,b)trun-cating変異,c)wild-type/silent変異]の正診率を算出した。画像データは299 ■m四方の画像に細分化し,deep learningはInception V3(google社)を用いた。一段階目としてIHC染色有無の診断の170正診率を,二段階目に染色の有無別に3種類の変異診断の正診率を,それぞれTraining群(N=176)とTest群(N=64)に分け,算出した。4.結果 一段階目では,正診率97.2%(Training群),92.2%(Test群)で,病理医判定を予測可能なAI診断を構築することができた。二段階目では,染色ありの症例においてAI診断により80%超の正診率[a)82.5%,b)87.4%,c)82.5%]を達成し(Training群),Test群でも比較的良好であった[a)79.6%,b)87.0%,c)74.1%]。しかしながら,染色なしの症例における正診率が高いAI診断は困難であった。5.まとめ 染色あり症例においては,比較的良好な正診率でのAI-TP53IHCのTP53変異診断アルゴリズムを確立することが可能であった。日気食会報,73(2),2022Deep learningによるTP53免疫染色の遺伝子変異パターン診断今村 裕1),高松 学2),原口郁実3),蟹江恭和1),丸山 傑1),坂本 啓1),藤原大介1),金森 淳1),岡村明彦1),布部創也1),沖 英次4),森田 勝5),峯 真司3),馬場秀夫6),渡邊雅之1)人工知能・ビッグデータを用いた研究ワークショップ2

元のページ  ../index.html#134

このブックを見る