J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1)東京女子医科大学 画像診断学・核医学171VRC)の優勝者は,2012年のAlexNetから2017年のSENetまでCNNの画像認識ソフトが独占している3)。しかも2015年のResNetは人間の誤検知率を下回り,初めてAIが画像の認知機能で人間を超えたと称された。このCNNの理論は,例えばCTのmatrix数は512×512であるが,27×27ピクセルから,9×9ピクセル,5×5ピクセルと次第に畳み込んで,画像全体の分析を行う手法である。良好な出力を得るために教師画像としてのビッグデータと,高速な学習を可能とするためにgraphics processing unit(GPU)を装備したPCが必要とされている。CNNは教師画像を学習に利用することで,CTの肺結節の検出にも利用可能であるし,検出した結節の良悪性を鑑別することも同時に可能となる。現在では,読影用ワークステーションやCT装置自体に結節検出が組み込まれたものも一般的になり,乱立した感がある。4.深層学習のさらなる応用 画像診断の領域では,この深層学習を画像処理に応用することも行われ始めている。エネルギーサブトラクション撮影は異なる電圧で撮影した2枚の画像から,胸部X線写真の骨を除いた画像(軟部画像)を作成可能である。しかし,深層学習による学習を応用すると,通常の胸部X線写真から軟部画像を作成できるようになる。胸部X線写真における肺結節の検出は肺血管や胸郭との重なりで診断能の低下が起こることが知られているが,軟部画像を作成することでより結節検出能を向上させることが可能である4)。 近年,CTでは低線量撮影を行い逐次近似再構成を施すことで,低線量にもかかわらずノイズの少ない画像を得ることができるようになった。そこで低線量画像の教師画像として通常線量のCT画像を学習させることで,さらなるノイズの低減を可能にす日気食会報,73(2),20221.はじめに 現在,胸部画像診断の人工知能(AI)は深層学習を中心とする第3世代に入り,ビッグデータの利用・応用が開始されたことも相まって,臨床実用の環境が整いつつある。一方,近年RadiomicsやRa-diogenomicsの研究分野が盛んに重要視されるようになってきた。特に腫瘍学の分野では,遺伝子や免疫の領域は治療と直結するため,今後の発展が大いに期待されている。2.胸部画像診断でのAIの歴史 胸部画像診断におけるAIの発展は,画像情報がDigital imaging and communications in medicine(DICOM)の統一規格で管理され,院内のPicture archiving and communication systems(PACS)で保存されるようになったことが後押しをしている1)。スクリーニング検査での結節検出と結節の良悪性の鑑別に関する臨床応用の報告が多くなされてきた。結節検出に関しては,スクリーニング検査での医師の負担軽減目的で製品化されたものがみられる。第2世代のAIは機械学習が主流であり,そのアルゴリズムを簡単に解説すると,まず胸郭や肺の領域抽出を行い,次に,周波数差分の技術を用い両肺野に数十個もしくは百個以上の結節候補を拾い上げる.そして,拾い上げたすべての結節候補を,さまざまな特徴量(円形らしさ,中央の透過性の低下,左右の対称性など)から真の結節か否かを分析し,最終的に検出結果を出力する2)。3.深層学習 現在の深層学習の主流はconvolutional neural network(CNN)である。2010年から始まった,大規模画像認識の競技会であるThe ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge(ILS-坂井修二1),國弘康裕1),白井友理恵1)胸部画像診断における人工知能の現状人工知能・ビッグデータを用いた研究ワークショップ2
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