AIのスタンダードが確立されていくと思う。できれば,スタンダードとなったAI製品は,臨床試験でその有用性が検証され,保険の加算が算定されると各病院は導入しやすいし,開発速度はもっと進むと考える。そして,画像診断を行う際,これら診断ツールを上手に使いこなし,読影作業効率を向上させ診断速度と診断能の向上に役に立てていく時代に移行していくと思う。 本抄録/会議録に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはありません。文 献る技術が臨床応用されるようになってきた5)。5.AIの限界と今後への希望 2015年のILSVRCでResNetが人間の画像認知能力を超えたと■されだした頃,画像診断医は近い将来仕事がなくなるのではないかとの,多くの声を耳にした。それは第2世代AIの全盛期に医用画像処理を専門にするエンジニア達のつぶやきに大変似ている。第3世代の深層学習の限界は,シングルタスクからマルチタスクにする際に途方もない数の教師画像を準備する必要があり,なかなか一般的になっていないのが現状である。例えば肺癌の症例でも既存の肺病変として,肺気腫,間質性肺炎,結核による慢性炎症性変化を合併している場合があり,いずれもそれら診断を並行して行う必要がある。しかも既存の肺病変は肺癌の形態を修飾することがあり,これもさらに莫大な教師画像を必要とする。今後は,IBM社が提供するWatsonのようなAIが,患者の年齢,性別,家族歴,嗜好,現病歴,血液検査データなどを検索して,画像とその他の臨床データを総合的に判断する診断ツールが開発されると予想している。関連する文献をとてつもないスピードで学習して,限られた症例数で高い診断能を発揮する可能性を秘めている。いわゆるRadiomicsの将来形である。さらに個人の全DNA配列をスキャンすることが可能になった現在,将来において,ある個人が各々の疾患に罹患する可能性を考慮し,疾病の予防と検診が可能になると予想している。予防からの癌の個別診療であり,これがRadiogenomicsの今後の利用方法ではないだろうか。6.最後に これからしばらくの間は乱立するAIを診断ツールとして臨床実用が始まり,淘汰の時代がきて,日気食会報,73(2),20221) Sakai S, Yabuuchi H, Matsuo Y, et al:Integration of temporal subtraction and nodule detection sys-tem for digital chest radiographs into picture ar-chiving and communication system(PACS):four-year experience. J Digit Imaging 21:91─98, 2008.2) Sakai S, Soeda H, Takahashi N, et al:Computer-aided nodule detection on digital chest radiogra-phy:validation test on consecutive T1 cases of resectable lung cancer. J Digit Imaging 19:378─382, 2006.3) 木戸尚治:Artificial Intelligence(AI)の胸部画像診断への応用と将来への展望.画像診断38:1296─1305, 2018.4) Endo K, Kaneko A, Horiuchi Y, et al:Detectabili-ty of pulmonary nodules on chest radiographs:bone suppression versus standard technique with single versus dual monitors for visualization. Jpn J Radiol 38:676─682, 2020.5) Higaki T, Nakamura Y, Tatsugami F, et al:Im-provement of image quality at CT and MRI using deep learning. Jpn J Radiol 37:73─80, 2019.172
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