J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)東京医科大学病院 呼吸器・甲状腺外科173それぞれと病理学的なリンパ節転移(nodal up-stage)との関連を検討した。3.結果 stage 0/IA1/IA2/IA3はそれぞれ72/176/260/ 143例,CTRとCTVRの中央値は0.66と0.39であった。nodal upstageは63名(10%)に認めた。nodal upstageに関してROC曲線を用いてAUCを測定すると,CTRとCTVRはそれぞれ0.776と0.840で有意にCTVRが良好であった(p=0.010)。また,多変量解析ではCTVR>0.5のみが独立したnodal upstageの予測因子であった(p<0.001)。対象のうち,術前にPET-CTを撮影した338例について検討すると,nodal upstageを37名(10%)に認め,SUVmax高値(p=0.002)とCTVR>0.5(p=0.028)がnodal upstageの独立した予測因子であった。4.結語 臨床病期0─IA期におけるAIによる腫瘍体積の測定は術前に診断困難であったリンパ節転移予測に有用であり,悪性度評価や術式の選択に関し従来のHRCTを凌ぐものであることが示唆された。日気食会報,73(2),20221.背景 高分解能CTによる肺癌の充実部分の径の腫瘍全体径に対する割合(consolidation tumor ratio,CTR)の測定は生物学的悪性度の評価や術式選択において重要である。しかし,腫瘍最大割面での充実部分とすりガラス部分の境界は必ずしも明瞭ではなく,CTRの測定が困難であったり,検者間バイアスもあり客観的で正確な診断が望まれる。われわれは人工知能(AI)による肺結節自動解析ソフトを企業と共同開発し,腫瘍の3D解析による早期肺腺癌の質的評価を試みた。2.対象・方法 2010年から2017年までに当院で手術を行った臨床病期0─IA期の肺腺癌のうち,1.25 mmスライスの薄切CTを撮影した651例を対象とした。結節はCTデータからシステムにより自動抽出,解析される。さらにAIが畳み込みニューラルネットワークによりすりガラス成分から充実成分を判別し,体積を自動で測定する.従来の高分解能CTによる2次元のCTRとAIによる充実成分体積/腫瘍全体体積(consolidation tumor volume ratio,CTVR)のAIを用いた腫瘍体積測定による臨床病期0─IA期肺腺癌の悪性度評価河口洋平1),村上浩太郎1),牧野洋二郎1),工藤勇人1),前原幸夫1),嶋田善久1),萩原 優1),垣花昌俊1),大平達夫1),池田徳彦1)人工知能・ビッグデータを用いた研究ワークショップ2
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