J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録国立がん研究センター東病院 1)大腸外科,2)NEXT医療機器開発センター 手術現場に内視鏡技術が導入され30年以上の年月が経過した。その間に内視鏡手術を検証するための臨床試験が世界中で施行され,今やあらゆる疾患領域において内視鏡手術は標準的な役割を果たすようになった。整容性や低侵襲などの優位性が示される中,内視鏡手術の本質は動画情報のリアルタイムでの共有であるともいえる。内視鏡手術は術中の外科医間での情報共有を可能とし,今やその録画情報のデータベース化を構築する研究開発が国内外で進みつつある。アカデミアの研究材料としてのみでなく,企業が製品開発に翻訳できるような価値のあるデータベース構築のための整備作業はまさに未来の外科学に求められるものである。また,近年の人工知能(AI)の進展は今まで「暗黙知」として行われていた手術手技を「形式知」に変換することを可能にした。莫大なデータベースから手術手技をタグ付けし,さまざまな手術情報をアノテーションする作業は非常に地道な作業ではあるが,手術動画にお175ける良質な教師データの付加は,大きな価値をもたらすものである。AIを用いた研究開発は世界的に始まったばかりではある。しかしながらさまざまな手術器具,工程,解剖構造の自動認識の開発は日々刻々と進んでいる。その結果,内視鏡手術の技術自動評価システムや将来の手術ロボットの自動化へ向けた道筋が夢の世界ではなくなろうとしていることを感じざるを得ない。国立がん研究センター東病院では現在,内視鏡手術動画のデータベース構築に関する事業(AMED:「内視鏡外科手術のデータベース構築に資する横断的基盤整備」)と,企業と連携し実際の手術動画のデータベースからの情報をAIに学習させ,さまざまな医療機器開発につなげる事業(AMED:「外科手術のデジタル・トランスフォーメーション:情報支援内視鏡外科手術システムの開発」)を行っている。さらに2020年度より外科医の内視鏡手術技能評価をAIで自動化する研究開発も進行中である。日気食会報,73(2),2022AIを用いた内視鏡手術の未来伊藤雅昭1),2),竹下修由1),2),長谷川寛1),2),北口大地1),2)人工知能・ビッグデータを用いた研究ワークショップ2
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