日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)神戸大学 食道胃腸外科176日気食会報,73(2),20221.はじめに 深層学習を始めとする人工知能による手術動画の解析が試みられている。今回,単施設のデータを用いて鉗子検出モデルを作成し,胸腔鏡下食道亜全摘術(minimally invasive esophagectomy:MIE)での右反回神経周囲郭清動画における術者間の手術器具使用状況を解析したので報告する。2.方法 オープンソースの物体検出アルゴリズムYO-LOv3を用いた鉗子検出モデルを実装した。これを用いてMIEでの右反回神経領域郭清における術者間の手術器具使用状況に関する情報を動画より取得した。対象となった術者は日本内視鏡外科学会技術認定医の2名で,食道領域手術の経験数からtrain-ee(T)とmentor(M)とする。症例は2018年から2019年までに神戸大学医学部附属病院で食道悪性腫瘍に対してMIEを行った計45例(T 13例,M 32例)で,各動画における鉗子の運用状況を解析した。工藤拓也1),押切太郎1),澤田隆一郎1),原田 仁1),裏川直樹1),後藤裕信1),長谷川寛1),金治新悟1),山下公大1),松田 武1),掛地吉弘1)オープンソースの物体検出アルゴリズムYOLOv3を用いた胸腔鏡下食道亜全摘術の手術動画解析人工知能・ビッグデータを用いた研究3.結果 年齢,性別,腫瘍局在,進行度,術前化学療法の有無について2群間に有意な差はなかった。手術操作時間はTが有意に長かった(18.2分[7.6─44.9]vs. 8.9分[4.9─9.9],p<0.001)。剥離鉗子の出現率はTが有意に多かった(45.4%[25.1─61.8]vs. 38.8%[12.9─59.2],p=0.019)。エネルギーデバイスの出現率はMが有意に多かった(34.2%[18.8─55.6]vs. 39.1%[21.6─55.6],p=0.045)。右反回神経麻痺はTに有意に多かった(15%vs 6%,p<0.001)。4.結語 手術動画解析により,術者の修練度に伴い不要な剥離回数が減少し,神経麻痺をおこすことなく効率的にエネルギーデバイスを使用する割合が増すことがわかった。物体検出アルゴリズムYOLOv3を用いた鉗子検出モデルによる手術技能の定量化は手技の評価や教育に非常に有用である。ワークショップ2

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