日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)群馬大学総合外科 消化管外科187日気食会報,73(2),20221.背景と目的 縫合不全は食道癌術後ある一定の確率で認められ,入院期間の延長や経済的負担の増加,精神的ストレスの増加などQOLの低下につながるだけでなく,長期的にも再発率の上昇から予後の悪化につながる合併症の一つである。消化管吻合における血流の維持は創傷治癒,縫合不全予防に重要であることから,当科では胃管血流の評価目的にサーモグラフィーによる温度測定を行ってきた。今回われわれは当科で行ってきたサーモグラフィーを用いた胃管の温度と縫合不全発症との関係を検討したので報告する。2.材料と方法 症例は2015年から2017年に当科で胸部食道全摘・3領域郭清・胃管再建術を施行した51例(男性45:女性6),平均年齢66.8歳。測定法としてサーモグラフィーカメラ(Testo社)を用いて胃管の作成前,作成後の温度測定を行った。測定部位は前庭部,体部,吻合予定部で,その絶対値,吻合部温度/前庭部温度比をパラメーターとして測定した。宗田 真1),渡邊隆嘉1),中澤信博1),生方泰成1),栗山健吾1),佐野彰彦1),酒井 真1),調  憲1),佐伯浩司1)食道癌術後縫合不全に留意した胃管作成におけるサーモグラフィーの有用性気管食道科の医薬品・医療機器開発3.結果 患者背景と縫合不全の有無に有意差を認めなかった。また術前併存疾患,術前治療の有無,再建経路に関しても縫合不全との間に有意差を認めなかった。胃管作成前,胃管作成後両方において前庭部から胃管吻合予定部にかけて順に温度が低下する傾向を認めた。縫合不全に関する検討では,胃管作成前後の吻合部温度/前庭部温度比の検討では有意差を認めなかったものの,胃管作成後の吻合予定部の温度が高いほど有意に縫合不全が少なかった(p=0.007)。ROC curveからcut off温度を27.6度と設定すると,胃管作成後の吻合予定部の温度が27.6度以上の症例ではそれ以下の症例と比べ有意に縫合不全率が少ない結果(p=0.003)となった。4.結語 食道癌手術における胃管再建術におけるサーモグラフィーの利用は縫合不全を予防するために有用であり,さらなる機器の改良により近年増加している鏡視下手術等への応用が期待される。ワークショップ4

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