J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1)埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科,2)東京都健康長寿医療センター研究所,3)東京医科歯科大学 食道胃外科188年80倍の拡大内視鏡に450倍のECを内蔵した2眼式ECが試作された。第1,第2世代ECを用い,食道癌症例を生体内で検討した3)。病理医にEC画像のみで生検省略が可能か判定してもらうと1125倍ECでは84%の症例で生検診断省略可能と判断したが,一方で450倍ECでは66%であった。また,筆者らはType分類を英文化し,またこれを運用するフローチャートを作成した(図1)。 Type1(非癌):核密度が低く観察される■平上皮細胞はN/C比が低く核異型のないもの(図1(a))。Type2(境界):核密度の上昇,核異型を認めるがType3とするには軽微である(図1(b))。これには食道炎,intraepithelial neoplasia,癌などさまざまなものが含まれる。Type3(悪性):核は腫大し,核密度が高く核異型が観察される(図1(c))。 しかし,第2世代ECは80倍拡大レンズとECレンズが離れているため小病変へのアクセスが困難で,連続的に細胞レベルまで拡大可能なECの開発を要望した。 第3世代EC:2009年380倍まで連続拡大可能なEC(GIF-Y0002)が開発された4)。これにより通常観察,NBI拡大観察,細胞レベルまでの超拡大観察が1本の内視鏡で連続的に可能となりスクリーニング検査でも使用可能となった。これを用いさまざまな非癌病変も超拡大観察するようになった。しかし当時の技術の限界であった光学380倍の拡大率では核異型の判定が困難な症例が存在し,病理医は食道炎,異型上皮の2/3の症例を超拡大観察上「悪性」と診断した5)。これは本体内蔵のデジタルズー日気食会報,73(2),20221.はじめに 超拡大内視鏡エンドサイトスコープ(EC)は500─1000倍まで拡大率をあげることにより生体内でリアルタイムに細胞の観察を可能にした超拡大内視鏡である(Olympus Medical Systems社)。最新のECを用いれば一連の研究により食道■平上皮組織では生検組織診断における困難例を除いて良悪性を判定可能である。 EC開発はKarl Storz社製Contact endoscopeによる食道癌切除標本の基礎検討が出発点である。現在のECでの観察と同様に非癌食道粘膜,食道癌ともに細胞が観察された。しかしContact endoscopeは硬性鏡であり観察は耳鼻咽喉科,婦人科領域に限られていた。これを消化管に挿入可能な超拡大軟性鏡にするというわれわれのアイデアに基づき開発が始まった。2.超拡大内視鏡ECの開発と研究 第1世代EC:第1世代ECは2003年に生検鉗子孔を通過する外径3.4 mmの単焦点プローブとして開発された(倍率450倍,1125倍)。第1世代ECを用いKumagaiらは世界初のECによる食道癌の観察に成功し,ECに関する最初の論文を報告している1)。川田らは切除標本の検討から効率的に癌を識別するType分類を提案した2)。しかし,プローブは耐久性に問題があり,また拡大機能のない太いマザースコープを使用しなければならないという問題点があった。 第2世代EC:この問題を解決するために2005熊谷洋一1),田久保海誉2),川田研郎3),山本瑛介1),鈴木興秀1),豊増嘉高1),幡野 哲1),石畝 亨1),松山貴俊1),石橋敬一郎1),持木彫人1),石田秀行1)エンドサイトスコープ開発と今後気管食道科の医薬品・医療機器開発ワークショップ4
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