日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)神戸大学大学院医学研究科外科学講座 呼吸器外科学分野190「術中視野障害の改善」「閉創時の止血操作減少」について有意に効果があったことを確認した。また,最近ではロボット支援下胸腔手術(RATS)にパウダータイプのORCを使用している。RATSにおいては肋間動静脈の走行の関係で特に背側ポートからの出血対応に難渋する。シートタイプの止血剤の挿入が難しいため,パウダータイプが有用である。パウダータイプはシートタイプと比較し,ゲル化が強いため止血効果が高い印象である。3.術後癒着防止 癒着防止剤として胸腔内での使用効果は確立されていない。われわれはこれまでに胸腔鏡下肺切除術を行った50症例に癒着防止剤として保険適用のあるORCを使用した。3例で同側再手術を行ったがすべての症例において被覆部周囲に軽度の胸膜肥厚を認めたが胸腔内に癒着は認めなかった。4.まとめ 医療材料を工夫して使用することで手術の安全性を高めていくことが可能と考える。日気食会報,73(2),20221.はじめに Oxidized regenerated cellulose(酸化再生セルロース:ORC)は質量で約50%のセルロースを含む木材パルプから製造されており1960年代からその開発が進んでいる。生体内でマクロファージの加水分解酵素(■-D-グルコシダーゼ,■-D-グルクロニダー ゼ)により分解され最終的にブドウ糖とグルクロン酸が生成される。用途は主に止血剤,術後癒着防止剤として知られており,われわれは胸腔鏡下手術において,ポート孔の創縁止血および再手術時の癒着剥離回避目的で本材料を使用しておりその作用について紹介する。2.創縁止血 胸腔鏡手術においてポート孔からの微細な出血は胸腔鏡視野を容易に遮る要因となる。われわれはポート孔創縁にシートタイプのORCを使用することにより胸腔内への血液の垂れ込みを減少させた。2018年には上記作用について胸腔鏡下手術108例を対象としたランダム化比較試験で検証を行い,田中雄悟1),土井健史1),法華大助1),眞庭謙昌1)呼吸器外科領域での酸化再生セルロースの使用について気管食道科の医薬品・医療機器開発ワークショップ4

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