日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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測定した(n=4)。 (3)慢性実験:ラットを全身麻酔下に挿管し,肺に5 mmの胸膜欠損を作成。各シーラントを噴霧し閉胸した。一定期間後(POD 1, 7, 14, 28, 56)に気胸有無・血算生化学所見・組織所見を評価した(n=3)。3.結果 (1)摘出肺の耐圧性評価ではGS群102.9±15.6 cmH2O,FG群28.37±5.1 cmH2Oであった(p<0.01)。追従面積はGS群1893(2.1倍)±292 mm2およびFG群1302(1.4倍)±213 mm2であった(p=0.016)。 (2)急性実験ではGS群68.8±18.0 cmH2O,FG群43.3±7.1 cmH2Oであった(p=0.021)。 (3)慢性実験では両群で気漏再発はなく有害事象を認めなかった。GSは8週,FSは2週で吸収されており,GSの初期の炎症所見がFSに対して良い傾向があった。4.結語 新規組織接着剤(GS)は高い接着性と追従性を有し,約8週で吸収され慢性的にも有害事象なく,気漏閉鎖への臨床応用が期待できる。J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)筑波大学 呼吸器外科191日気食会報,73(2),20221.背景 呼吸器外科手術において気漏は頻度の高い合併症で制御に難渋することがある。対策として本邦ではFibrin glue(FG)が汎用されているがその接着力は十分とは言えない。われわれは物質材料研究機構で開発された接着剤を用い,気漏に対する効果の共同研究をしている。新規組織接着剤(Gelatin seal-ant:GS)は冷水魚スケソウダラのゼラチンを疎水化し細胞外マトリックス蛋白質への接着力を高め,ポリエチレングリコールを架橋剤としている。ブタ摘出肺・生体ブタ,ラットで,GSとFGの接着力,所見を比較した。2.方法 (1)摘出肺実験,耐圧実験:ブタ摘出肺に10 mm大の胸膜欠損を作成し各シーラント噴霧。人工呼吸器にて換気し気漏出現時の気道内圧を測定した(各群n=5)。追従性実験:ブタ摘出肺の胸膜表面に1片が30 mmの正方形に各シーラントを噴霧し,肺を拡張させシーラントが胸膜に追従できる最大面積を測定(n=5)。 (2)急性実験:ブタを全身麻酔下に挿管し,肺に10 mmの胸膜欠損を作成。各シーラント噴霧。人工呼吸器にて換気を行い,気漏出現時の気道内圧を佐藤幸夫1),柳原隆宏1),巻 直樹1),皆木建治1),岡村純子1),関根康晴1),菅井和人1),河村知幸1),小林尚寛1),菊池慎二1),後藤行延1),市村秀夫1)タラゼラチンを用いた呼吸器外科用接着剤の開発気管食道科の医薬品・医療機器開発ワークショップ4

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