日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022本稿は第72回日本気管食道科学会の抄録/会議録である。1)日本医科大学大学院医学研究科 呼吸器外科学分野192周囲の微小血管を閉塞(微小細血管障害),PDTによる酸化ストレス,炎症性変化などによるさまざまなサイトカインの誘導等により抗腫瘍効果をもたらすと報告されている。わが国で癌治療に対して厚生労働省より認可を受けている腫瘍親和性光感受性物質は,レザフィリン®(タラポルフィンナトリウム)である。レザフィリン®は,1997年10月から2000年3月まで全国10施設において中心型早期肺癌に対する臨床第II相試験が施行され,2003年10月に厚生労働省より認可を受け2004年6月に薬価収載された2)。レザフィリン®はクロリン環を有する水溶性で664 nmに吸収スぺクトルを有している。レザフィリン®は静脈投与後4〜6時間でレーザー照射を施行する。レザフィリン®PDTでは,病巣の長径が10〜20 mmで内視鏡的な分類で平坦型,早期ポリープ型,のいずれに対しても一様に有効で,95.6%のCR,10 mm以下の腫瘍には93.6%と従来の報告より高い治療成績を得られるようになり,1.0 cmを越える病巣に対しても強い抗腫瘍効果を有することが報告された3)。この要因としては,中心型早期肺癌病巣に対する局在診断の向上により,レーザーの照射するべき範囲を正確に診断できるようになったことが考えられる。3.末梢小型肺癌に対するPDTの臨床研究 超高齢化により肺気腫,間質性肺炎などの併存疾患のために外科治療が不可能な症例も増加すると予測される。しかし,こうした末梢肺野の小型肺癌に対するPDTは確立されていない。今までは,末梢型肺癌に対しては,レーザープローブを誘導できずに,経気管支的なPDTの適応ではなかった。3次元ナビゲーションなどの進歩,極細レーザープローブの開発が進み,末梢小型肺癌に対するPDTの臨日気食会報,73(2),20221.はじめに 新しい医療機器による,新しい治療法を開発するために,最も重要なことは,「患者さんにとって本当に良い治療法なのか?」「患者さんに安全に使用できるか?」などを実証し,薬機法承認を見据えて開発していくことである。臨床現場でのニーズを具現化し「患者さんに新しい医療」を安全に提供するためには,初期開発段階から工学系,企業との連携を行い,非臨床データの充足性の確認,治験といったプロセスをPMDAと密接に相談しながら進めていくことが必要である。すなわち,開発の段階から承認を見据えた長いロードマップ作成,出口戦略を練ることが必要である。 一方,素晴らしいシーズを開発し,患者さんのためになる素晴らしいものを開発してもニーズがなければ,企業の参加は困難で,製品化への道はそこで閉ざされてしまう。医工連携を遂行するためには,研究者がレギュラトリーサイエンスに対して十分に理解し,新しい技術の有効性,安全性などの評価をするだけでなく,ニーズ・市場性について吟味し,企業と連携することが必要である。2.PDTのメカニズム PDTは,光感受性物質とその吸収波長のレーザー光により光線力学的反応を生じさせることで,腫瘍や増殖血管などを治療する方法である1)。光感受性物質がその吸収波長の光に曝露されると光エネルギーを吸収し励起状態に遷移し,これが基底状態に遷移する際のエネルギーにより活性酸素を生じ,細胞を壊死・アポトーシス,変性させると考えられている1)。こうした直接的な抗腫瘍効果以外に,腫瘍末梢小型肺癌に対する光線力学的治療の医師主導治験─新しい機器開発について臼田実男1)気管食道科の医薬品・医療機器開発ワークショップ4

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