日本気管食道科学会会報 第73巻2号
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J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022教育講演1第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より抄録を再録し,講演の図表を提供いただいた。 コロナ前,コロナ禍,コロナ後,感染対策はどのように変わっただろうか? コロナ前にわれわれが行っていた感染対策を振り返ると,1996年に新設された『院内感染防止対策加算』が算定されるようになり,それぞれの病院で感染防止対策加算,感染防止対策地域連携加算など感染対策のレベルを上げてきた。しかし,2020年から新型コロナウイルス感染症が流行して,果たしてわれわれがこれまで行ってきた感染対策や地域の連携は十分に機能を果たしたであろうか。残念ながら機能していたとは思えない。コロナ禍となり,これまでに経験したことのない感染症に対峙した時,われわれは世界中から情報をかき集め,これらをもとに院内のコロナ対策に当てはめてきた施設は少なくないはずだ。徐々にこの感染症の全貌が見えてくるようになり,主に飛沫感染対策を行えば制御できることがわかってきた。病院における感染対策は少しずつ強固なものになり,市中でも3密なる言葉が生まれた。脆弱だった検査体制も整備され,感染対策を強化したにもかかわらず医療機関や高齢者施設のクラスター発生は相次いで発生した。あの手この手で感染対策を行ってもコロナの流行を抑えることは困難な中で,新しいmRNAワクチンが登場し,今やワクチン頼みとなっているのもあながち間違ってはいないはずである。コロナ後(講演の時はまだコロナ禍かもしれないが)にどのような感染対策が必要なのか,の問いに対してはやはり昔から言われ続けている標準予防策である適切な手指消毒のタイミングと正しいマスク着用といった基本は忘れてはならないし,今後新1)国立病院機構九州医療センター 感染症内科56たな感染症に対しても柔軟に対応できる体制を整えたいものだ。当院で経験したクラスター事例など振り返りながら,もう一度,感染対策を考えてみたいと思う。日気食会報,73(2),2022pp.56─58長﨑洋司1)今だからこそ,もう一度,感染対策を考える

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