J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022教育講演2第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より抄録を再録し,講演の図表を提供いただいた。 医療の質を高めることには益々関心が高まっている。その中でも,医療安全(患者安全)を確保する取り組みは,その中心的な位置を占めるとされる。国際社会では,医療の質や安全の確保に関する関心は高まる一方である。これに関し,各国の第三者評価を国際基準で認定するISQua(International So-ciety for Quality in Healthcare),国際機関であるWHO(World Health Organization),政策決定者と専門家とが参加する閣僚級世界患者安全サミット,2021年に開始する予定であるG20 Patient Safety Leaders Groupなど,質や安全に関する最近の国際的な動きについて講演で説明したい。また,演者は所属する病院において,インシデントレポートシステムの運営や教育・研修等に取り組んでいる。とりわけ,思わしくない結果となった事例であり,かつ,紛争化する可能性がある事例に対して,迅速に対応する取り組みを続けている。具体的には,インシデントレポートとして事例を把握し,1)九州大学病院,2)日本医療機能評価機構59特に医療に問題がある可能性がある事例について会議を開催し,当院の責任の有無を含めて検証を行い,その結果を患者・家族に率直に説明している。そして必要であれば,謝罪して賠償を行う。問題がある事例の検出,他の診療科の医療に対し率直に問題を指摘する意見を述べること,患者・家族に謝罪すること,医療者が主導しながら賠償を進めること等は容易なことではないが,先述した国際潮流にみられる時代の変化はそれを求めていると考えている。奇しくも米国において,ほぼ同じ取り組みが保健省の組織であるAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality)やPatient Safety Move-ment Foundation(PSMF)によって熱心に推奨されており,CANDOR(Communication and Optimal Resolution)と称されている。2021年は台湾においてもこの取り組みについて説明する予定である。現在,PSMFとコミュニケーションを図っているこの取り組みについて,講演で説明する。日気食会報,73(2),2022pp.59─64後 信1), 2)患者・家族への率直な対応と医療安全を巡る国際潮流について
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