J. Jpn. Bronchoesophagol. Soc.Vol. 73 No. 2, 2022第72回日本気管食道科学会総会ならびに学術講演会予稿集より再録1)国立病院機構九州がんセンター,2)大分大学医学部 呼吸器・乳腺外科学,3)神戸大学 呼吸器外科,4)広島大学 呼吸器外科,5)北里大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科,6)神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科,7)千葉大学 呼吸器外科,8)獨協医科大学 呼吸器外科,9)福岡市民病院,10)防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学65院期間とした。3.結果 参加施設131施設,登録症例数230例,最終解析225例であった。縦隔への感染波及レベルは,気管分岐部頭側まで(Type I)100例(44.4%),下縦隔まで(Type II)125例(56.6%)であった。前下縦隔まで(Type IIA),前および後下縦隔まで(Type IIB),後下縦隔(Type IIC)はそれぞれ20(16%),62(49.6%),43例(34.4%)であった。Type IおよびIICの患者は,Type IIAおよびIIBの患者よりも頸部ドレナージのみが多く行われていた(34.3%,13.4%)。30日以内を8例に認め(3.6%,Type I/II:1/7),5年全生存率は68.6%であった。Type IIまでの波及が90日死亡率と関連していた(OR:5.18,p=0.045)。4.結論 今回の研究により後下縦隔に波及するType IICの割合が明らかとなった。これを基に新しいDNM分類を提案した。日気食会報,73(2),2022pp.65─691.背景と目的 降下性壊死性縦隔炎(Descending necrotizing mediastinitis:DNM)は,口腔内や咽頭などの深頸部の感染症が筋膜間■や気管周囲間■に沿って縦隔へ進展する重篤な感染症であり,可及的速やかな診断および外科的インターベンションが極めて重要である。現在までに,本疾患に関する多数例の診療科横断的な研究は皆無であり,その治療法は定型化されていない。正確な病態,診断に至る経過,治療方法,ドレナージの詳細,予後などを明らかにするため,日本気管食道科学会と日本呼吸器外科学会が共同での後ろ向き多施設観察研究を行った。2.対象と方法 2012年から2016年の5年間に降下性壊死性縦隔炎で外科的治療が行われた症例を対象とした。調査項目は,患者基本情報,診療情報,手術情報,術中・術後治療,予後とし,主要評価項目は手術後30日以内死亡率,副次評価項目は術後90日以内死亡率,術後1年生存率,人工呼吸管理期間,術後入岡本龍郎1), 2),杉尾賢二2),眞庭謙昌3),藤也寸志1),岡田守人4),山下 拓5),篠原尚吾6),吉野一郎7),千田雅之8),桑野博行9),塩谷彰浩10)降下性壊死性縦隔炎に関する多施設観察研究学会臨床研究発表会
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